ペルソナ設定シート付き:中小企業のSNSターゲット設計

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「誰に届けたいかが曖昧なまま投稿している」。SNS担当者から本当によく聞く悩みです。対象が広すぎると、投稿のテーマも言葉遣いも決めにくくなります。そこで使われるのが、ターゲットを一人の人物像として描く「ペルソナ」です。

ただ、ペルソナ作りにはお客様の情報集めが伴い、アンケートなどで個人情報を集めるなら個人情報保護法のルールを外せません。この記事では、ターゲットの決め方とペルソナシートの作り方に加え、材料を集めるときの個人情報の扱いを、個人情報保護委員会などの公式資料で確認できた範囲でまとめます。シートは「当社の一例」です。

この記事の3行まとめ

① ターゲットは「誰に」を決めること。ペルソナはそれを一人の人物像にして認識を揃える道具
② 材料は、インサイトなどの集計データとお客様の声。シートには個人が特定できる情報を書かず、傾向だけを書く
③ アンケートで個人情報を取るときは利用目的を具体的に示す。病歴や信条などは、原則あらかじめ本人の同意が必要

ターゲットとペルソナ:公的資料ではこう説明されている

中小機構J-Net21「事業コンセプトの書き方」では、ターゲットは事業コンセプトの「誰に」にあたり、お客さんの性別や年代、住んでいる場所、職業、趣味、価値観、利用頻度などを検討してプロフィールを明らかにすると説明されています。さらに明確にする方法として、想定するお客さんを究極の一人に絞り、ペルソナとしてプロフィールの詳細を作り上げる方法もあるとされています。(出典:中小機構J-Net21「事業コンセプトの書き方」)

同じページには、ターゲットを書くときは、お客さんの数が算定できる書き方(例:出店地から半径5km圏内に居住する人)にして、分母をイメージできることが大切だとも書かれています。ペルソナを一人に絞っても、その層がどれくらいいるかの視点は残しましょう。

また、総務省のサイトに掲載されている公共サービス向けの実践ガイドでは、ペルソナを、特定のサービスや製品の典型的な利用者像を具体的に描いた架空のユーザー像と位置づけ、年齢、職業、価値観、行動特性などを設定することで、複数の関係者のユーザー像を統一でき、利用者視点で意思決定しやすくなると説明しています。(出典:総務省サイト掲載「実践ガイド ステークホルダーマネジメント」)公共サービス向けの資料ですが、用語の説明は民間でも参考になります。

ペルソナの材料を集める:自社データ・集計値・お客様の声

材料は、SNSの管理画面で見られる集計データ、アンケートなどで聞くお客様の声、問い合わせ履歴などの自社の記録の3つです。集計データは個人を特定しない数字なので最初の材料に向きます(当社の考え方)。お客様の声や記録は個人情報を含みやすいため、次の章を確認してください。

材料公式ヘルプで確認できた内容注意点
Instagramインサイト(フォロワー)フォロワーが100人以上あると、フォロワーの増減、上位の地域、年齢層、最も活動する時間帯などの傾向を見られる(英語版ヘルプ)。(出典:Instagramヘルプ(About Instagram insights・英語))フォロワー全員が見込み客とは限らない
Instagramインサイト(オーディエンスの利用者層)利用者層は、プリセット期間を使い、リーチしたアカウントまたは反応したアカウントが100件を超えている場合に表示される。7日間で出ないときは、30日間など長い期間を選ぶ。(出典:Instagramヘルプ(インサイトを見る))件数が少ないと表示されない
LINE公式アカウント(友だち)ターゲットリーチの属性(性別・年齢・地域)を確認できる。ターゲットリーチが少ないと不明になる場合があり、表示は概ね3日前の数値。(出典:LINEヤフー for Business「LINE公式アカウント 分析 – 友だち」)友だちになった人の傾向であり、顧客全体とは限らない

ペルソナシートの作り方(当社の一例)

総務省サイト掲載の「サービスキャンバス」実践ガイドは、全員の要望に応えようとせず「深刻な問題を抱えている人」を想定すること、利用者の「困りごと」「嬉しいと感じること」「もっとも実現したいこと」を整合させて書くことを示しています。(出典:総務省サイト掲載「サービスキャンバスの使い方 実践ガイド」)この考え方を参考に、SNS向けに組み替えた当社のシートが次の表です。

項目書く内容の例書かないもの・注意
①呼び名「ミユさん(仮名)」実在のお客様の氏名・顔写真は使わない
②年代・職業・住まい30代・会社員・車で20分ほどのエリア1人に特定できるほど細かく書かない
③一日の流れとSNS平日の通勤時間と夜にSNSを見る(仮説)事実か仮説かを必ず区別して書く
④困りごとリフォームしたいが何から調べるか分からない特定の個人の悩みを写さない
⑤嬉しいこと・実現したいこと費用の目安が先に分かる。家族が過ごしやすい住まいにしたい—
⑥申し込む前の不安しつこく営業されないか、費用が膨らまないか—
⑦根拠メモ「問い合わせ内容の集計」など出どころを一行で個人名や連絡先は書かない

上の例は説明用の架空のペルソナです。シートの数は最初は1〜2名程度に絞ると運用しやすい、というのは当社の考え方の例です。BtoBでは、意思決定する人と調べる担当者が別になることがあり、立場ごとにシートを分ける方法もあります(一般的な考え方の例)。

ペルソナ作りで守りたい個人情報のルール

ここからは、個人情報保護法と個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)で確認できた内容です。改正があり得るため、実施前に最新版を確認し、個別の判断は同委員会の窓口や専門家にご相談ください。

何が「個人情報」になるか:SNSで公開されている情報も含まれる

個人情報保護法第2条第1項では、個人情報は生存する個人に関する情報で、氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合でき、それにより識別できるものを含む)などとされています。(出典:個人情報保護法)ガイドライン(通則編)には、個人情報の事例として、官報、新聞、ホームページ、SNS等で公にされている特定の個人を識別できる情報も挙げられています。(出典:個人情報保護委員会「ガイドライン(通則編)」)つまり、公開されているから自由に集めてよいとは限りません。フォロワーの個別アカウントを調べて名簿のようにまとめるのは避け、集計値を使うのが安全です(当社の考え方)。

アンケートやインタビューで個人情報を取るとき

  • 利用目的をできる限り特定する:個人情報保護法第17条第1項は、利用目的をできる限り特定することを求めています。ガイドライン(通則編)は、「事業活動に用いるため」「マーケティング活動に用いるため」を、具体的に特定していない事例に挙げています。「ペルソナ作成の調査に使う」など、本人が想定できる程度に書きましょう。(出典:個人情報保護法、個人情報保護委員会「ガイドライン(通則編)」)
  • 取得するときに利用目的を明示する:ガイドライン(通則編)は、アンケートに記載された個人情報を直接本人から取得する場合は、あらかじめ本人に利用目的を明示しなければならない事例としています。ネット上では、送信ボタン等をクリックする前に利用目的が目に留まる配置にすることが望ましいとされています。(出典:個人情報保護委員会「ガイドライン(通則編)」)
  • 決めた目的の範囲を超えて使わない:第18条第1項は、特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うには、あらかじめ本人の同意が必要としています。たとえば、調査のためと説明して集めた連絡先を営業メールに使うのは、範囲を超える可能性があります(当社の例)。(出典:個人情報保護法)
  • 偽りの手段で取得しない:第20条第1項は、偽りその他不正の手段による取得を禁止しています。調査の目的を偽って聞き出すことは避けましょう。(出典:個人情報保護法)
  • 他社と共同で実施するとき:個人情報保護委員会のQ&Aでは、複数社で共催するアンケートで各社がそれぞれ取得する場合は各社が利用目的をあらかじめ明示し、幹事会社だけが取得して各社に個人データとして提供する場合は、原則として本人の同意が必要とされています。(出典:個人情報保護委員会「ガイドラインに関するQ&A」Q7-47)

要配慮個人情報は質問しないのが基本

第2条第3項は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実など、取扱いに特に配慮を要するものを要配慮個人情報としています。第20条第2項は、法令に基づく場合などの例外を除いて、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはならないとしています。(出典:個人情報保護法)ペルソナ作りにこうした情報が必要になることは多くありません。必要性を説明できない質問は、アンケートに入れないのが基本です(当社の考え方)。

ペルソナをSNS運用に使う

シートができたら、運用の判断に使います。「この投稿は、ミユさんが知りたいことに答えているか」と確認すると、方向がぶれにくくなります。たとえば、④困りごとは投稿テーマの候補に、⑥申し込む前の不安はよくある質問の投稿に、③は投稿時間や媒体を試す仮説に使えます(当社の例)。

お客様が自社を知って申し込むまでの順序はカスタマージャーニーで設計するSNS接点マップ、全体の位置づけはSNSマーケ戦略書の作り方、目的の決め方はSNSマーケの目的設計5パターンで整理しています。

ペルソナ設計のよくある失敗

失敗例対処
想像だけで作り、検証しない根拠メモに出どころを書き、仮説は事実で置き換える
特定のお客様をそのまま書く複数の声から共通点を抜き出し、仮名の人物像にまとめる
アンケートの目的を「マーケティングのため」とだけ書くペルソナ作成など、具体的な用途を書く

よくある質問(Q&A)

Q. ペルソナは実在のお客様に基づくべきですか?
A. お客様の声や集計データに基づく方が検証しやすくなります。特定の個人の情報はそのまま書かず、複数の声の共通点を仮名の人物像にまとめましょう。データがない開業直後は「仮説」と書いて始め、事実に置き換えていく方法もあります(一般的な考え方の例)。

Q. SNSで見かけた人のアカウントを参考にペルソナを作ってもよいですか?
A. 個別に調べて記録すると、公開情報でも個人情報に該当しうるため避けた方が安全です。集計された数字や、利用目的を示して集めたお客様の声を材料にしましょう。(出典:個人情報保護委員会「ガイドライン(通則編)」)

Q. ペルソナは何人くらい作ればよいですか?
A. 決まりはありません。最初は1〜2名が運用しやすい、というのが当社の考え方の例です。

まとめ

ターゲットは「誰に」を決めること、ペルソナはそれを一人の人物像にして認識を揃える道具です。材料は集計データとお客様の声から集め、仮説と事実を区別して書きます。アンケートなどで個人情報を取るときは、利用目的を具体的に示し、範囲を超えて使わず、要配慮個人情報は必要性がなければ聞かないことが基本です。

最初の一歩として、今週中に管理画面の集計データを確認し、シートの項目①〜⑤だけ書いてみてください。調査をするなら、先に利用目的の文章を準備しましょう。

参考情報・出典