「SNS運用にはいくらかかるのか、相場を知りたい」。予算を決めるとき、最初にぶつかる疑問です。ところが検索すると、サイトごとに金額の幅が大きく違い、どれを信じてよいか分かりません。それもそのはずで、同じ「運用代行」という名前でも、投稿の代行だけの場合と、戦略設計・撮影・広告運用・レポートまで含む場合では、仕事の中身がまったく違うからです。
当社では、国や業界団体などが公表した調査で、運用費用の金額の分布を原文で確認できるものを見つけられませんでした。そのため、この記事では運用費用の「相場」の金額は掲載しません。代わりに、費用がどんな要素でできているか、見積書のどこを見れば比較できるか、予算の決め方、広告費の公式条件(公式ヘルプで確認できたもの)を整理します。他社の見積を同じ物差しで並べられるようになることが、この記事のゴールです。
この記事の3行まとめ
① 費用は「戦略・制作・運用・広告・管理」の要素に分け、見積書で何が含まれているかを揃えて比べる
② 広告費(媒体費)は運用費用とは別に必要。各媒体の最低予算などの条件は公式ヘルプで確認する
③ 内製でも社員の工数という費用がある。金額は自社の人件費で計算し、他社の相場に頼らない
SNS運用の費用は6つの要素に分けて考える
運用代行や制作会社の見積は、会社によって項目名がばらばらです。まず次の6つに分けて読むと、何にお金がかかっているかが見えやすくなります(分け方は当社の整理の一例です)。
| 要素 | 主な中身 | 見積で確認すること |
|---|---|---|
| 戦略・設計 | 目的とKPIの設定、ターゲット整理、競合調査、運用方針 | 初回だけか毎月か。成果物(提案書など)は何か |
| コンテンツ制作 | 企画、撮影、動画編集、画像デザイン、キャプション作成 | 1か月の本数と種類。修正は何回までか |
| 運用作業 | 投稿・予約、コメントやメッセージへの対応、情報収集 | 対応する範囲と時間帯。炎上時の対応は含むか |
| 広告運用 | 配信設定、改善、クリエイティブの差し替え | 広告費(媒体費)が別か。運用手数料の計算の基準は何か |
| レポート・会議 | 月次の報告、定例会、改善提案 | 頻度、形式、報告する指標。KPIとの対応 |
| ツール・素材 | 管理ツール、有料素材、フォント、BGMなど | 誰の契約か。解約後も使えるか |
同じ「月額」でも、この6つのうちどこまでが含まれているかで中身は変わります。見積を比べるときは、金額より先に、自社が必要とする要素が含まれているかを確認してください。KPIの決め方はSNS運用のKPI設定完全ガイドを参考にしてください。
広告費(媒体費)は別枠で考える
SNS広告を使う場合の費用は、大きく媒体に支払う広告費と、配信設定や改善を行う人への運用の費用に分かれます。見積書では、この2つが別の行になっているか、まとめて「広告運用費」となっているかを確認してください。手数料の決め方(広告費に連動するのか、固定なのか)は会社によって異なるため、計算式まで書面で確認しておくと後で揉めにくくなります。
広告費には、各媒体が定めた条件があります。公式ヘルプで確認できた例を紹介します。
- TikTok広告:日予算の最低額は、キャンペーンで50米ドル以上、広告セットで20米ドル以上とされています。通算予算の場合、広告セットは20米ドルに日数を掛けた額以上で、31日間なら620米ドル以上が例示されています。(出典:TikTok広告ヘルプ(予算))
- Meta広告(FacebookとInstagram):最小予算は国や目的によって異なる場合があり、予算が最小予算を満たしていないとMeta広告マネージャにアラートが表示されるとされています。結果の単価目標の入札戦略では、1日の予算を目標額の5倍以上にする例が示されています。(出典:Metaビジネスヘルプセンター(最小予算のベストプラクティス))
- 日予算の意味:TikTokの日予算は、1日あたりに支出したい「平均金額」とされています。「日予算×日数=月の請求額」と決めつけず、実際の消化額を確認しながら管理することが大切です。(出典:TikTok広告ヘルプ(予算))
これらは変更されることがあり、為替や配信の条件でも変わります。実際に出稿するときは、各媒体の最新の公式ヘルプを確認してください。少額から始める方法は低予算から始めるSNS広告ガイドで解説しています。
見積書でチェックしたい8項目
外注する場合、金額以外にも費用に影響する点があります。見積の段階で、次の8項目が書かれているか確認しましょう。
- 業務の範囲:本数、種類(静止画・動画・ストーリーズなど)、対応するSNSの数
- 修正の回数と追加費用の条件:どこから別料金になるか
- 撮影・出演・素材の費用:誰が負担するか。有料素材の利用範囲
- 広告費と運用手数料の区別:請求書で別行になっているか
- 制作物の権利:著作権の扱いが決められているか。制作を依頼しただけでは、完成した著作物の著作権を取得したことにはならず、依頼した側が取得するには契約での合意が必要とされています(出典:文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」)
- 最低契約期間と解約の条件:契約の読み方はSNS運用代行の選び方で詳しく扱います
- 支払いの条件:締め日と支払期日、振込手数料の負担
- 報告の内容:月次レポートに何が載るか
支払いについては、相手が個人事業主などのフリーランスの場合に注意点があります。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、報酬の額や支払期日などを書面または電磁的方法で明示する義務があり、報酬の支払期日は給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間で定める必要があるとされています(発注する側の体制などで、守る義務の範囲が異なります)。(出典:公正取引委員会 フリーランス法特設サイト、e-Gov法令検索(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律))また、個人に報酬を支払う場合は、報酬の種類によって源泉徴収が必要になることがあります。国税庁は、請求書で消費税等の額が報酬の額と明確に区分されていれば、報酬の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えないとしています。(出典:国税庁タックスアンサー No.2792)どの報酬が該当するかは、税務署や税理士にご確認ください。
内製の費用は「社員の時間」でできている
「内製なら無料」と思われがちですが、担当者が使う時間は費用です。自社の数字で次のように見積もると、外注との比較ができます(金額は他社の相場ではなく、自社の給与などから計算してください)。
- 月の作業時間:企画、撮影、投稿、返信、分析、会議を分けて書き出す
- 担当者の1時間あたりの人件費:給与、社会保険料など自社の実際の数字から計算する
- 工数×単価:これが内製の人件費の目安になる
- ツール・素材・機材:スマホ以外に必要なものを足す
この計算で、内製の費用が見えると、外注に切り替えたときに社員の時間をどの仕事に回せるか、という視点でも比較できます。内製と外注の選び方は内製と外注の判断基準で整理しています。
予算の決め方:目的から逆算する4ステップ
- 目的を1つ決める:例「予約を増やす」「採用の応募を増やす」
- KPIと期間を決める:最初の3か月は仮説の検証、のように期間を区切る(期間は当社の例)
- 必要な活動を書き出す:6つの要素のうち、自社でできること・外に頼むことを分ける
- 上限を決めて見直す:月の上限を決め、四半期ごとに成果と費用を見て配分を変える
金額は先に決めず、まず上の順で「必要な活動」を出し、見積を取ってから上限を調整するのが失敗しにくい進め方です。
費用まわりのよくある失敗
| 失敗例 | 対処 |
|---|---|
| 月額の安さだけで選んで、必要な作業が含まれていなかった | 6つの要素で見積を並べ、含まれない作業を追加料金も含めて確認する |
| 広告費と運用手数料の区別が曖昧 | 請求書で別行にしてもらい、手数料の計算式を書面で確認する |
| 内製の人件費を数えていない | 月の作業時間×自社の1時間あたり人件費で見積もる |
| 制作物の権利を決めずに終了した | 契約で著作権の扱い、利用範囲、データの納品を決める |
| 日予算×日数を月の上限と思い込む | 媒体ごとに日予算の仕組みを公式ヘルプで確認し、上限は通算予算などで管理する |
よくある質問(Q&A)
Q. 予算ゼロでもSNS運用はできますか?
A. 広告や外注を使わず、自社の担当者が投稿するだけなら、外部への支払いを抑えて始められます。ただし、担当者の作業時間という費用は発生します。有料の機能やツールの料金は、各公式ページで最新の内容を確認してください。
Q. 月額が安い見積と高い見積は、何を見て比べればよいですか?
A. 金額の差は、含まれる作業の範囲の差であることが多いです。6つの要素(戦略、制作、運用、広告、報告、ツール)のどこが含まれているかを表にして並べ、足りない作業を追加した場合の合計で比べてください。
Q. 広告費はいくらから始めればよいですか?
A. 各媒体には最低予算などの条件がありますが、始める金額は目的と、1件の成果にかけてよい金額から逆算して決めます。まずは公式ヘルプの最低条件を確認し、少額で検証してから増やす進め方が現実的です。
まとめ
SNS運用の費用は、戦略・制作・運用・広告・レポート・ツールの要素に分けて見積を比べることが基本です。広告費は別枠で、各媒体の条件は公式ヘルプで確認します。内製の費用は社員の時間で、自社の人件費から計算します。金額の相場に頼らず、自社の目的から逆算して上限を決めましょう。
最初の一歩として、今の運用にかけている月の作業時間を書き出し、6つの要素のどこに時間を使っているか確認してみてください。

