「SNSで何を達成したいのかと聞かれると答えに詰まる」「とりあえず毎週投稿している」。中小企業のSNS担当者から、よくうかがう悩みです。目的が決まっていないと、見るべき数字も決まらず、フォロワー数のような見えやすい数字だけを追いかけてしまいます。
この記事では、SNSの目的を「認知・集客・CV(問い合わせや購入)・採用・CS(既存顧客との関係づくり)」の5パターンに整理し、目的ごとに見る指標をどう変えるかを表にまとめます。5パターンは当社の整理(一般的な分類の例)であり、各SNSの公式な分類ではありません。公式ヘルプで原文を確認できた指標や機能だけを出典付きで書き、運用上の目安は「例」と明記します。
この記事の3行まとめ
① 目的は「認知・集客・CV・採用・CS」の5パターンで整理でき、目的が違えば見る指標も変わる(当社の整理)
② 公式ヘルプで確認できる指標は目的ごとに異なる。確認できない数字(応募数や来店数など)は自社で数える
③ 最優先の目的は1つに絞り、事業の状況が変わったら目的も見直す
なぜ「目的」を先に決めるのか
Metaの公式ヘルプ(広告マネージャの目的の選び方)は、広告を作る前に、ビジネスの目標と最も重視する成果を検討し、何を達成したいのかをはっきりさせておくことが重要だと説明しています。また、キャンペーンの目的はビジネスの成長に伴って変化し、最初は認知度アップと新規顧客の獲得が重要でも、時間が経つと購入やイベント登録を促すことが重要になる可能性がある、とも書かれています。(出典:Metaビジネスヘルプセンター(広告の目的を選択する))
これは広告の話ですが、広告を使わないふだんの投稿でも同じ考え方が使えます。目的が決まっていれば、投稿の内容、使うSNS、見る数字をそこから逆算できます。反対に目的がないと、数字が動いても「良かったのか悪かったのか」を判断できません。
目的5パターンと見る指標(当社の一例)
次の表は、当社が目的別にご提案している「見る指標」の一例です。右の列は、公式ヘルプで読めた範囲の関連項目です。指標の名前や仕様はSNS側で変わることがあるため、実際に使う前に最新の公式ページを確認してください。
| 目的 | 達成したい状態の例 | 見る指標の例 | 公式ヘルプで確認できた関連項目 |
|---|---|---|---|
| 認知 | まだ知らない人に存在を知ってもらう | 見られた回数、見た人の数、新しいフォロワー | Instagramインサイトの「閲覧数(Views)」「閲覧者(Viewers)」/Meta広告の「認知」目的 |
| 集客・送客 | サイトや予約ページ、店舗へ来てもらう | 自社サイトへのアクセス数、予約ページに来た数(自社で計測) | Meta広告の「トラフィック」目的/LINE公式アカウントの友だち追加経路 |
| CV | 問い合わせ、予約、購入などをしてもらう | 問い合わせ件数、予約件数、購入件数(自社で数える) | Meta広告の「リード」「売上」目的 |
| 採用 | 求職者に知ってもらい、応募してもらう | 応募数、面接に進んだ数(自社で数える) | 厚生労働省:募集広告に表示が必要な項目 |
| CS・ファン育成 | 既存のお客様との関係を深める | 反応した人の数、友だちの増減 | Instagramの「インタラクション」「反応したアカウント」/LINEの友だち追加数・ブロック数 |
パターン別の考え方と公式で確認できたこと
認知:見られた回数と、見た人の数を分けて見る
Instagramの公式ヘルプ(英語版)では、「Views」はコンテンツが再生または表示された回数、「Viewers」は画面上で1回以上見たユニークなアカウント数と説明されています。Viewersには、リーチしたアカウントの上位の国・都市・年齢層・性別の内訳も含まれます。一部の指標は「推定値で開発中」と注記されています。(出典:Instagramヘルプ(About Instagram insights・英語))同じ人が何度も見れば閲覧数は増えますが、見た人の数は増えません。認知が目的なら、この2つを分けて追うと、「広がったのか、同じ人に繰り返し見られたのか」を区別できます。
集客・送客:入口の数と、その先の数を別に持つ
Metaの広告の目的の一つ「トラフィック」は、Facebookページ、Instagramのショップ、ウェブサイト、アプリなど指定した先へのトラフィックを増やすための目的と説明されています。(出典:Metaビジネスヘルプセンター(広告の目的を選択する))ただし、SNS上の数字だけでは、来た人が予約や購入まで進んだかは分かりません。サイトや予約ページ側の数字は自社で計測し、SNSの数字と並べて見る必要があります。プロフィールからの導線づくりはリンク in bio の最適化で解説しています。
CV:「何をコンバージョンとするか」を先に決める
Metaの広告の目的には「リード」(メッセージ、電話、登録などでビジネスやブランドのリードを獲得する)と「売上」(商品やサービスを購入する可能性が高い利用者を見つける)があります。(出典:Metaビジネスヘルプセンター(広告の目的を選択する))自社の場合、問い合わせフォーム、電話、LINEのメッセージ、予約のどれを成果とするのか、先に定義しておかないと、数字が集まっても振り返れません。指標の置き方は、KPI設定完全ガイドも参考になります。
採用:求人に必要な表示を確認してからSNSで発信する
厚生労働省は、職業安定法では、インターネットやX等のSNSを含む広告等で労働者の募集に関する情報を提供するとき、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないとし、募集広告には「募集主の氏名(又は名称)・住所・連絡先(電話番号等)・業務内容・就業場所・賃金」の表示が必要だと案内しています。募集主向けQ&Aでは、連絡先としてSNSのメッセージ機能を示す方法でよいかという問いに対し、電話番号、メールアドレス、または自社サイト上の専用問い合わせフォームへのリンクのいずれかを記載する必要がある、と答えています。また、会社サイトの募集要項へのリンクだけでは足りず、募集情報を提供する広告等そのものに6項目を記載する必要があるとされています。(出典:厚生労働省「労働者の募集広告の表示について」)採用の投稿を作る前に、この6項目を投稿や固定投稿に入れる準備をしましょう。個別の判断は所管の労働局やハローワークなどの窓口にご確認ください。
CS・ファン育成:反応した人と、友だちの増減を見る
Instagramの「Interactions」は、いいね・コメント・保存・シェアなど、人がコンテンツに反応した行動の数と説明されています。「Accounts engaged」は反応したユニークなアカウント数で、投稿・ストーリーズ・ライブでは、フォロワーとフォロワー以外の内訳を見られるとされています。(出典:Instagramヘルプ(About Instagram insights・英語))LINE公式アカウントの分析では、友だち追加数、ターゲットリーチ、ブロック数を確認でき、友だちがどの経路で追加・ブロックしたかも見られます。ただし、友だち追加経路では、プライバシーの観点から日ごとに20以上の追加がない場合は数値が表示されないと説明されています。(出典:LINEヤフー for Business「LINE公式アカウント 分析 – 友だち」)数が少ない時期は、日次ではなく期間を長くとって見ましょう。
目的を選ぶ3つの質問
- いま一番の課題は何か:「知られていない」「知られているが来てくれない」「来るが申し込まれない」「人が足りない」「一度きりで終わる」のどれに近いかを選びます。
- 最優先を1つに絞る:2つ以上並べる場合も、順位をつけます。運用に使える時間と人手に合わせることが現実的です(当社の考え方の例)。
- いつまでに、何を見て判断するか:期限と、見る指標を1〜2個に決めます。「何件・何%」という具体的な数値は、現状の数字を見てから自社で決めてください。
目的は事業の状況に合わせて切り替える
先ほどのMetaの説明のとおり、目的は固定ではありません。開業直後なら認知、知られてきたら集客やCV、既存のお客様が増えたらCS、というように切り替えるのは自然です。切り替えるときは、①指標を一緒に変える、②社内で共有する、③切り替えた日付と理由を記録する、の3つを徹底しましょう。この記録が、SNSマーケ戦略書の見直し欄にそのままつながります。
目的設計のよくある失敗
| 失敗例 | 対処 |
|---|---|
| 目的が「フォロワーを増やす」だけで止まっている | 増えた先で何をしてもらいたいか(予約、問い合わせ、応募など)まで書く |
| 目的が5つ全部になっている | 最優先を1つに絞り、残りは候補として別に書く |
| SNSの数字だけで成果を判断している | 問い合わせ数など、SNS外で自社が数える数字も並べる |
| 採用の投稿に募集主や賃金の情報がない | 厚生労働省が示す6項目を投稿に入れる準備をする |
| 目的を変えたのに指標がそのまま | 目的を変えたら、見る指標と報告の形も更新する |
よくある質問(Q&A)
Q. 目的は1つに絞らないといけませんか?
A. 決まりはありません。ただ、一度に追う目的が増えると、投稿の方向や見る数字が散りやすくなります。当社の考え方の例では、最優先を1つ決め、余力が出たら次の目的を足す進め方をおすすめしています。
Q. 広告を使わなくても、この5パターンは使えますか?
A. 使えます。5パターンは「SNSで何を達成したいか」の整理であり、広告の有無とは関係がありません。Metaの広告の目的は6種類(認知、トラフィック、エンゲージメント、リード、アプリの宣伝、売上)で、5パターンとは別の分類です。採用やファン育成に、そのままの名前で対応する目的は、このヘルプの表にはありません。(出典:Metaビジネスヘルプセンター(広告の目的を選択する))
Q. 目的が決まったら、次は何をすればよいですか?
A. 見る指標を決め、基準となる現状の数字を記録します。指標の選び方はKPI設定完全ガイド、数字の見方はSNS効果測定の方法で解説しています。
まとめ
SNSの目的は、認知・集客・CV・採用・CSの5パターンで整理でき、目的が違えば見る指標も変わります。公式ヘルプで確認できる指標と、自社で数える数字を分け、最優先の目的は1つに絞りましょう。採用の発信では、募集広告に必要な6項目の表示にも注意が必要です。
最初の一歩として、今週中に「いまの最大の課題」を一文で書き、5パターンのうち最優先の目的を1つ選んでみてください。そのうえで戦略書の「目的と指標」の章に書き込むと、次の作業につながります。

