SNS運用 内製 vs 外注 判断基準

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「SNS運用は自社でやるべきか、外注すべきか」。中小企業の担当者から、最もよく聞かれる相談の一つです。ところが、この問いに「こちらが正解」と言い切れる答えはありません。会社の人手、扱う商品、お客様の層、そして何を目指すかによって、最適な形が変わるからです。

そこで、この記事では「内製か外注か」を一括りで決めるのをやめ、運用の作業を分解して、作業ごとに判断する方法を紹介します。判断の表は当社が勧める一例で、数字や相場を根拠にしたものではありません。あわせて、内製でも外注でも自社に残る責任(アカウント権限、広告表示、個人情報)を、公式の資料で確認できた範囲で整理します。

この記事の3行まとめ

① 「内製か外注か」ではなく、企画・撮影・投稿・広告・分析などの作業ごとに、誰が担うかを決める
② 判断は「時間・専門性・即応性・知識の蓄積・リスク」の5軸で見る(当社が勧める一例)
③ 内製でも外注でも、アカウントの権限、広告表示、個人情報の管理は自社の責任として残る

まず運用の作業を分解する

SNS運用は、投稿するだけの仕事ではありません。次のように作業に分けて、どこに時間がかかっているかを書き出すと、外に出す候補が見えてきます。

作業中身の例外に出しやすい度合い(当社の一例)
企画・戦略目的の整理、テーマ設計、年間計画中。自社の事業の理解が必須なので、外部は壁打ち役に向く
撮影・動画編集写真・動画の制作、デザイン高。専門の道具と技術が必要で、単発でも頼める
投稿・予約文章作成、投稿設定、ハッシュタグ低。日々の作業で、自社の言葉が出やすい
コメント・DM対応返信、問い合わせの一次対応低。素早さと、事業の知識が求められる
広告運用配信設定、予算管理、改善高。専門知識が必要で、成果が費用に直結する
分析・報告数値の集計、改善提案、会議資料中。集計は外に出せるが、意味づけは自社でも持つ
権限・承認の管理アカウントの管理、投稿の最終承認自社に残す。外部に渡さない

表の「度合い」は、あくまで当社の考え方の一例です。自社に撮影が得意な社員がいるなら、撮影を内製に置く選択もあります。

判断基準:5つの軸で作業ごとに決める(当社が勧める一例)

作業ごとに、次の5つの軸で「内製が向くか、外注が向くか」を見ます。1つの軸だけで決めず、自社に当てはまる数を数えるのがコツです。

軸内製が向くケース外注が向くケース
担当者の時間SNS担当に毎週まとまった時間を割ける担当者が他の業務と兼任で、時間が取れない
専門性基本的な投稿で足り、学ぶ意欲がある動画制作や広告運用など、専門の技術が必要
即応性その日の出来事を、すぐ発信したい(来店、予約、限定情報)計画的に準備した投稿が中心
知識の蓄積運用の経験を社内に残し、他の販促にも使いたいまず成果の出る型を外から学びたい
リスク管理自社の判断で素早く止められる体制がある炎上や個人情報の対応を、外部の体制も使って厚くしたい

たとえば、飲食店や美容室のように「今日の様子」を出したい業種は、投稿と返信は内製、撮影や広告は外注、という組み合わせが考えやすいです。反対に、担当者がおらず、専門性も必要な立ち上げ期は、企画から外部の力を借りて、少しずつ社内に移す方法もあります。KPIの決め方はSNS運用のKPI設定完全ガイドを参考にしてください。

判断の前に確認したい、自社の現状5問

表を使う前に、次の5つに答えてみてください。「はい」が多い作業ほど内製の候補、「いいえ」が多い作業ほど外注の候補です(当社の一例です)。

  1. その作業に、毎週決まった時間を使える人がいますか
  2. 今の担当者は、その作業のやり方を人に教えられますか
  3. その作業は、当日や直前の判断が必要ですか(必要なら内製向き)
  4. 失敗したとき、自社で気づいて直せますか
  5. 担当者が休んだり辞めたりしても、別の人が引き継げますか

業種のイメージで考える:組み合わせの例

作業ごとの判断は、業種によって変わります。以下は考え方を示すための一例です。

業種のイメージ内製に置きやすい作業外に出しやすい作業
店舗型(飲食・美容など)日々の投稿、ストーリーズ、返信メニューや作品の撮影、広告の設定
BtoBの中小企業お客様の声の収集、投稿の最終確認企画・記事の構成、動画編集、分析
ネット通販商品の入荷情報、問い合わせ対応商品写真、広告運用、月次の分析

内製でも外注でも、自社に残る3つの責任

アカウントの権限:担当者が替わっても守れる形にする

Metaの公式ヘルプでは、ビジネスポートフォリオのユーザーには、個人の「メンバー」、提携先の広告会社などの「パートナー」、API呼び出しを行う「システムユーザー」の3種類があると説明されています。(出典:Metaビジネスヘルプセンター(ビジネスポートフォリオのユーザーについて))内製の担当者はメンバーとして個別に追加し、異動や退職のときはメンバーを削除する、という運用ができます(同ヘルプの関連記事に手順の案内があります)。1人の担当者だけが管理者という状態を避け、複数人で管理する体制をおすすめします。外部に渡すときの考え方はSNS運用代行の選び方で扱っています。

広告表示:社員の投稿にも注意が必要

内製では、社員が自分のSNSで自社の話題を投稿する場面もあります。消費者庁のQ&Aでは、従業員が自身のアカウントで自社商品の感想を投稿しても、それだけで直ちに告示違反の「事業者の表示」と判断されることはないとしています。ただし、販売や開発に関わる役員、管理職、担当チームの一員など、販売を促進する地位や立場にある人が、販売促進のための表示を行う場合は「事業者の表示」に当たると考えられ、その場合は「広告」など事業者の表示であることを明瞭にしなければ告示に違反するとされています。(出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)社員の投稿ルールを、運用ルールに含めておきましょう。

個人情報:自社で扱う場合も、安全管理は必要

個人情報保護法第23条は、個人情報取扱事業者に、取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを求めています。(出典:個人情報保護法第23条)DMやフォームで集めた情報を、誰が見られるか、どこに保管するかを決めておきましょう。外注するときは、さらに委託先の監督(同法第25条)も必要になります。

ハイブリッドの4パターン

多くの会社は、全部内製か全部外注かではなく、組み合わせを選びます。分担の例を整理します(いずれも当社の一例です)。

パターン分担向く状況注意点
A 制作だけ外注投稿・返信は内製、撮影・動画・デザインを外注日々の発信は自社で、見栄えを上げたい素材の権利と納品形式を決める
B 企画と分析を外注投稿は内製、企画・分析・改善提案は外部運用の型を身につけたい社内の窓口を決め、学ぶ時間を確保する
C 広告だけ外注オーガニックは内製、広告運用のみ外部投稿は回っているが広告は専門知識がない広告費と手数料を分けて確認する
D ほぼ全面外注実作業は外部、承認と権限管理は自社担当者を割けない時期窓口と承認フローを明確にする

費用の見積の読み方はSNS運用費用相場と内訳で解説しています。

外注から内製へ移すときの手順(例)

  1. 作業の手順書を外部に作ってもらう:投稿の流れ、素材の保管場所、承認の手順
  2. 社内の担当を決め、まず1つの作業から引き取る:投稿や返信など日々の作業から
  3. 月次の報告を一緒に読む:数値の見方と、次の施策の理由を聞く
  4. 権限を自社の管理者に集約する:外部の権限は必要最小限に減らす
  5. 引き継ぎの期間を契約に書く:終了時のデータ引渡しと、質問の対応期間を決める

内製・外注の判断でよくある失敗

失敗例対処
外注すれば社内の負担がゼロになると考えた承認・連絡・素材提供の作業は残る。窓口を決める
担当者1人に全権限が集中した複数人で管理し、メンバーごとに権限を付ける
外注先に運用を任せきりにした報告を読む担当を決め、知識を社内にも残す
安く済むと考えて、人件費を数えずに内製にした作業時間を書き出し、自社の人件費で比較する

よくある質問(Q&A)

Q. 外注すると、社内にノウハウが残らないのではありませんか?
A. 何もしないと残りにくいのは確かです。月次の報告を担当者が読んで質問する、運用の手順書を作ってもらう、引き継ぎの期間を決めるといった工夫で、社内に残すことができます。

Q. 担当者が1人しかいない場合はどうすればよいですか?
A. 1人に集中すると、休みや退職で運用が止まります。投稿の手順を書き残し、アカウントの権限は複数人で管理してください。時間が足りない作業は、制作や広告など、外に出しやすいものから外部に頼む方法があります。

Q. いつ内製から外注に切り替えるべきですか?
A. 「担当者の時間が足りない」「専門の技術が必要になった」「炎上や個人情報の対応を厚くしたい」のいずれかに当てはまったときが、検討の目安です。切り替える前に、アカウントの権限と手順書を整えておくと安心です。炎上時の備えはSNS炎上対策マニュアルをご覧ください。

まとめ

内製か外注かは、運用の作業を分解し、時間・専門性・即応性・知識の蓄積・リスクの5軸で作業ごとに決めると整理しやすくなります。どちらを選んでも、アカウントの権限、広告表示、個人情報の管理は自社の責任として残ります。

最初の一歩として、今の運用で使っている作業を書き出し、「自社に残す」「外に出せる」を色分けしてみてください。

参考情報・出典