SNS運用ガイドライン作成テンプレ

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SNSの運用ルールが担当者の頭の中にしかないと、判断が人によって変わり、担当者が代わった途端に運用が止まります。「これは投稿してよいのか」を毎回個人が悩む状態は、担当者にとっても会社にとっても負担です。そこで役に立つのが、A4数枚でも構わないSNS運用ガイドラインです。

この記事では、当社が勧める章立てと、そのまま手直しして使える条文例を表で示します。章立てや条文の文言は「当社が勧める一例」であり、法律で定められた書式ではありません。一方で、広告表記、著作権、個人情報、従業員の私的な投稿など、法令に関わる部分は、消費者庁・文化庁・e-Govなどの原文で確認できた範囲を出典つきで書いています。実際に社内規程として定める際は、弁護士や社会保険労務士に確認してください。

この記事の3行まとめ

① ガイドラインは「目的・体制・承認・禁止事項・アカウント管理・事故時・私的利用・改定」の8点を押さえると形になる
② 条文は短く具体的に。判断に迷う場面(広告表記、素材の権利、個人情報)は、公式資料に沿って書く
③ 作って終わりにせず、担当者の交代時と年に1回など、見直す日を決める(頻度は当社の一例)

章立ての一例:8つの章に分ける

章書くことポイント
1 目的・対象何のために運用するか。対象のアカウント・人運営する全アカウントを一覧にして添付する
2 運用体制責任者・担当者・確認者・副担当表示の確認者を決める(後述の指針を参照)
3 投稿ルール語り口、頻度、ハッシュタグ、返信方針数字は「例」でよい。運用しながら調整する
4 承認フロー誰が作り、誰が確認し、誰が公開するか投稿の種類で区切る(後述)
5 禁止事項と注意事項広告表記、権利、個人情報、機密、他者の批判理由を一言添えると守られやすい
6 アカウント管理ID・パスワード、権限、引き継ぎ個人のスマホ・個人アカウントに依存しない
7 従業員の私的なSNS会社の情報、所属の書き方、相談先会社の見解と誤解されない配慮を求める
8 事故・見直し事故時の連絡先、改定の手順と時期初動は別紙(SNS炎上対策マニュアル)にまとめる

条文例(雛形):そのまま手直しして使える形で

次の文言は、当社が作成した雛形の例です。社名や役職名、数字(◯)は自社に合わせて置き換えてください。

条項条文例
目的このガイドラインは、当社がSNSを運用する際の判断基準を定め、お客様と当社の信頼を守ることを目的とする。
体制SNS運用の責任者は◯◯部長とする。投稿内容の確認者は◯◯とし、確認者不在時の代行者は◯◯とする。
承認投稿は、作成者以外の確認者が内容を確認してから公開する。企画・キャンペーン・お知らせなど、区分ごとの承認者は別表のとおりとする。
広告表記広告・宣伝・PRにあたる投稿は、その旨が一般の閲覧者に分かる表記を付ける。判断に迷う場合は確認者に相談する。
素材の権利他人の画像・文章・音楽は、権利者の許可または利用条件を確認できる場合に限って使用する。出所不明の画像は使わない。
個人情報お客様やスタッフの顔写真・氏名・連絡先は、本人の同意の範囲内で扱い、同意の記録を残す。
アカウント管理ログイン情報は会社が管理する方法で保管し、他のサービスと同じパスワードを使い回さない。担当者の異動・退職時は、当日中に権限とパスワードを見直す。
私的利用従業員は、私的なSNSで会社の機密情報、お客様の情報、未公開の情報を投稿しない。自社の商品・サービスについて投稿する場合は、事前に確認者へ相談する。
事故時誤投稿・苦情・誹謗中傷を確認した者は、削除や返信をする前に、直ちに責任者へ連絡する。
改定このガイドラインは、担当者の交代時と年1回、責任者が見直す。

条文に落とし込むときの根拠:公式の資料で確認できること

広告表記と、表示の管理体制

消費者庁は、令和5年10月1日から、広告であるのに広告であることを隠す「ステルスマーケティング」は景品表示法違反になると案内しています。SNS投稿も対象で、規制の対象は商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。(出典:消費者庁(ステマ規制))明瞭な表示の例として、運用基準は「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」などの用語や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章を挙げています。(出典:ステマ告示の運用基準(PDF))また、事業者に対しては、表示等を管理する担当者を定めることなどが指針で示されており、中小企業では、代表者が表示等を管理している場合は代表者を担当者とすることもできる、専任である必要はないとされています。(出典:表示等の管理上の措置の指針)上の「体制」の条文は、この考え方に沿った一例です。

権利・個人情報

文化庁は、SNSへの投稿は「一般への公開」であり、原則として権利者の許可が必要だと説明しています。(出典:文化庁)個人情報保護法では、個人情報取扱事業者は、従業者に個人データを取り扱わせる際には、安全管理が図られるよう、必要かつ適切な監督を行わなければならないとされています(第24条)。(出典:個人情報保護法)キャンペーンの応募情報などを扱う際の考え方は、ユーザー参加型キャンペーン設計も参考にしてください。

承認フローの設計:投稿の種類でレベルを分ける

すべての投稿を同じ重さで承認すると、運用が止まります。リスクに応じて分けるのが現実的です(区分は当社の一例です)。

区分例承認の目安
定型営業時間のお知らせ、既存メニューの紹介確認者1名の事後確認でも可とするかを決める
通常日々の投稿、事例紹介作成者以外の確認者が公開前に確認
要注意キャンペーン、価格・効果の表現、お客様の写真、時事ネタ確認者と責任者の2段階。必要なら専門家に確認
外部依頼インフルエンサー・外注先による投稿広告表記と表現を事前に確認する

外部の事業者に表示の作成を任せる場合は、その事業者に対しても、景品表示法の考え方の周知・啓発や、法令遵守の方針・手順の明確化を行うことが指針で示されています。(出典:表示等の管理上の措置の指針)依頼時に、ガイドラインを共有する運用にしておくと確実です。

アカウント管理:パスワードと引き継ぎ

総務省のサイトでは、パスワードは同僚など第三者に教えない、メールでやり取りしない、複数のサービスで使い回さない、といった点が示されています。また、多要素認証(パスワードに加えて追加の要素で確認する方法)が、より安全性を高める方法として紹介されています。(出典:総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」)運用ルールでは、次のように具体化できます。

  • 管理台帳:アカウント名、登録メールアドレス、管理者、多要素認証の有無、最終確認日をまとめる。パスワード自体は台帳に書かず、管理ツールで保管する。
  • 権限:運用する人数分の権限を持たせ、1つのIDを複数人で使い回さない。各SNSで複数管理者を設定できるかは、公式のヘルプで確認する。
  • 交代・退職時:権限の削除、パスワードと認証手段の変更、連絡先メールの確認を、チェックリストにして当日中に行う。

開設時の設定はSNSアカウント開設手順チェックリストもご覧ください。

従業員の私的なSNS:会社の表示と見なされる場合がある

消費者庁のQ&Aによると、従業員が自分のSNSで自社の商品を使った感想を投稿しても、それだけで直ちにステマ規制の「事業者の表示」に当たると判断されることはありません。ただし、従業員の地位や立場、担当業務、表示目的などの実態によっては、事業者が表示内容の決定に関与したと認められ、「事業者の表示」に当たる場合があります。販売や開発に係る役員、管理職、担当チームの一員などが、商品の販売を促進するための表示を行う場合は、「事業者の表示」に当たると考えられるとされています。(出典:消費者庁(ステマQ&A)のQ3)

また、従業員が「私は○○社の社員です。」と所属を書くだけでは、一般消費者にとって「事業者の表示」であることが明瞭になっているとは必ずしもいえないとされています(同Q12)。このため、私的利用の章には、「自社の商品を宣伝する投稿は事前に確認者へ相談する」「宣伝にあたる場合は広告である旨を明記する」といった規定を置くと、判断に迷いにくくなります。

従業員の行為について会社が責任を負うかどうかは、事情によって異なります。民法第715条は、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと定め、使用者が選任・監督について相当の注意をしたときなどは別とされています。(出典:民法第715条)また、懲戒などの制裁を就業規則に定める場合は、その種類と程度を記載することが労働基準法に定められています(常時10人以上の労働者を使用する使用者)。(出典:労働基準法第89条)私的利用のルールを就業規則と結びつける場合は、社会保険労務士や弁護士に確認してください。

よくある失敗

失敗例対処
禁止事項だけで、判断の理由がない理由と、迷ったときの相談先を1行添える
承認者が1人で、不在だと止まる代行者と、定型投稿の扱いを決める
アカウントが担当者個人のスマホ・メールに紐づく会社管理のメールと、管理台帳に切り替える
作ったきり、更新されない担当者交代時と年1回の見直し日をカレンダーに入れる
業種固有の規制を入れていない所管官庁・業界団体の資料を確認し、別章を追加する(例:弁護士の発信ガイドライン)

よくある質問(Q&A)

Q. 従業員が数人の会社でも、ガイドラインは必要ですか?
A. 必要です。短くても、責任者・承認・アカウント管理・事故時の連絡先が決まっているだけで、担当者の迷いは減ります。消費者庁の指針でも、中小企業は規模に応じた措置でよく、必ずしも大企業と同等の措置が求められるわけではないとされています。(出典:表示等の管理上の措置の指針)

Q. 従業員の私的な投稿を、どこまで禁止できますか?
A. 個人の表現の自由やプライバシーとの兼ね合いがあり、どこまで制限できるかは事情によって異なります。会社の機密・お客様の情報・自社商品の宣伝といった論点に絞って規定するのが当社が勧める進め方の一例で、具体的な文言は社会保険労務士や弁護士に確認してください。

Q. ガイドラインは社外に公開してよいですか?
A. 公開してもよいですが、アカウント管理や事故時の連絡先など、内部の情報は別紙にして社内限定にするのが一例です。

まとめ

SNS運用ガイドラインは、目的・体制・承認・禁止事項・アカウント管理・私的利用・事故時・改定の8つの章で形になります。条文は短く具体的に書き、広告表記・権利・個人情報の部分は公式の資料に沿って確認しましょう。

まず、運営中のアカウントの一覧と、責任者・確認者の名前を決めるところから始めてみてください。そこから条文例を手直ししていけば、最初の版は短時間でまとまります。

参考情報・出典