商品やサービスを紹介する投稿ばかりだと、「売り込みばかり」と感じられ、読まれにくくなることがあります。一方で、何を発信するアカウントなのか、どんな会社なのかが伝わっていれば、投稿を見たお客様が「あの会社だ」と思い出しやすくなります。この「らしさ」を設計する考え方が、SNSブランディングです。
ただし、ブランディングは感覚で進めると、担当者が替わるたびに見た目も言葉づかいも変わってしまいます。この記事では、中小企業が自社で進められる形に絞り、考える順番(フレームワーク)、ビジュアル・トーン・テーマの3要素、プロフィールと名前の整え方、名前やロゴの権利面の確認までを整理します。フレームワークは一般的な考え方の「例」で、効果を保証するものではありません。公式の資料で確認できた事実には出典を付けています。
この記事の3行まとめ
① 先に「誰に・何を約束するか」を一文で決め、ビジュアル・トーン・投稿テーマの3要素に落とし込む
② 色や文字は、ブランドキットなど「決めたものを使い回す仕組み」で統一し、読みやすさも確認する
③ 名前・ロゴ・素材は、商標や著作権の面を最初に確認し、決めた内容は1枚の運用ルールにまとめる
SNSブランディングとは:約束と「らしさ」をそろえること
ここでは、SNSブランディングを「自社が誰に何を約束するかを決め、プロフィール、投稿の見た目、文章、テーマをそろえて伝えること」と整理します。企業やサービスの考え方によって定義はさまざまで、これは当社の整理の一例です。
そろえる対象は、大きく4つです。①プロフィール(名前、アイコン、自己紹介)、②ビジュアル(色、フォント、写真の雰囲気、投稿のテンプレート)、③トーン(文章の話し方)、④投稿テーマ(何を発信するか)。この記事では、②〜④を「3要素」、①を整える土台として扱います。
考える順番のフレームワーク(例):4つの問い
先に見た目を決めると、後から方向がぶれがちです。次の4つの問いに答える順番で設計する方法を、当社はおすすめしています(一般的な考え方をもとにした例です)。
| 順番 | 問い | 書き出す内容の例 |
|---|---|---|
| 1 | 誰に届けたいか(お客様像) | 年代や職業だけでなく、困りごと・選ぶ基準を一言で |
| 2 | 何を約束するか(提供する価値) | 「〜な人が、〜できるようにする」の一文 |
| 3 | 同業とどこが違うか(差別化の軸) | 品質、価格の手頃さ、創業者の思い、地域密着、環境への配慮など、自社の強みから1〜2つ |
| 4 | どんな印象で伝えるか | 「親しみやすい」「落ち着いた」など、3つ以内の言葉 |
差別化の軸は、挙げた例のうち当てはまるものを選べばよく、全部を掲げる必要はありません。競合が何を発信しているかを調べて決める方法はSNS競合分析のやり方も参考になります。この4つの答えが、あとの3要素のもとになります。
3要素の設計①:ビジュアルを統一する
ビジュアルは、色、フォント、写真の雰囲気、投稿のテンプレートの4つで決めます。色は、ロゴの色や既存のコーポレートカラーを軸に、メインとサブを少数に絞ると、統一感を保ちやすくなります(色数は当社の目安です)。
ブランドキットで「決めたもの」を使い回す
デザインツールのCanvaには、ブランドキットという機能があります。公式ヘルプでは、チームや組織の公式ロゴ、カラー、フォント、アセットを1か所にアップロードして整理でき、管理者やブランドデザイナーがチーム、クライアント、キャンペーンごとに複数のキットを作れると説明されています。ブランドキットに含まれる色とフォントだけを使うように制限したいときは、ブランドコントロールを設定します。(出典:Canvaヘルプセンター(ブランドキットを設定))利用できる機能やプランは変わるため、導入前に公式ヘルプで確認してください。同じ素材を使い回す仕組みを作ると、担当者が替わってもデザインが崩れにくくなります。広告のクリエイティブへの応用はSNS広告クリエイティブ制作で扱っています。
文字の読みやすさを確認する
W3CのWCAG 2.2(ウェブコンテンツのアクセシビリティの指針)では、テキストと背景のコントラスト比は、通常の文字で4.5:1以上、大きな文字で3:1以上とされています。ロゴやブランド名の一部になっている文字は、この要件の対象外とされています。(出典:W3C「WCAG 2.2」(達成基準1.4.3))これはウェブサイト向けの基準ですが、SNSの投稿画像で文字を載せるときの確認の目安として参考にできます。薄い色の文字や、写真の上に直接置く文字は、スマホの小さな画面で読めるか確かめましょう。
3要素の設計②:トーン&マナーを決める
トーンは、文章の「話し方」です。次の項目を決めて、例文を3つ作っておくと、誰が書いてもそろいます。
- 一人称:「私たち」「当店」「わたし」など
- 文体:です・ます調か、くだけた話し方か。語尾の癖
- 絵文字・記号:使う種類と頻度、使わない場面
- 使う言葉・避ける言葉:専門用語を言い換えるか、断定的な表現を避けるか
たとえば、若い層に向けた商品なら親しみやすい口調、法人向けなら丁寧で落ち着いた口調が合う、といった考え方があります。ただし、これは「例」です。反応を見て少しずつ調整しましょう。
3要素の設計③:投稿テーマの軸を3〜5つ決める
「このアカウントは何を発信するのか」を、3〜5つのテーマ(コンテンツの柱)で定義します。数は当社の目安です。たとえば、地元の食材を使う飲食店なら、次のような柱が考えられます。
- 地元食材を使ったレシピや料理の紹介
- 生産者さんの紹介
- 旬の食材の豆知識
- 店舗の日常
- 期間限定メニューの案内
柱が決まると、何を投稿するかを毎回ゼロから考えずに済みます。月ごとの割り当てや、行事に合わせた計画は年間SNSマーケ計画の立て方で解説しています。
プロフィールと名前を整える
プロフィールは、初めて訪れた人が最初に見る場所です。名前、ユーザー名、プロフィール写真は、ブランドの約束がひと目で伝わる形に整えます。Instagramの公式ヘルプ(英語表示で確認)では、プロフィールの名前、ユーザー名、プロフィール写真を変更でき、ユーザー名を変えるとフォロワーに通知されることがあり、多くの人に届いているアカウントではユーザー名の変更に審査が入る場合があると説明されています。(出典:Instagramヘルプ(プロフィール情報を変更する方法))あとから変えると混乱を招くことがあるため、最初に決めておくと安心です。
名前・ロゴの権利面を確認する
- 商標:商標法では、同一または類似の商品・役務に使う同一または類似の商標について、異なる日に複数の出願があったときは、原則として最先の出願人だけが登録を受けられるとされ(第8条)、商標権は設定の登録により発生します(第18条)。(出典:商標法第8条・第18条)名前やロゴを決める前に、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)などで似た登録がないか調べ、判断に迷う場合は弁理士などの専門家に相談してください。
- 画像・素材:文化庁は、ネットで見つけた画像を自由に使えるというのは誤解だと説明しています。(出典:文化庁「著作権、これってOK?NG?」)アイコンやロゴ、投稿の素材は、自社で作ったもの、または利用条件を確認できたものを使いましょう。ロゴ制作を外注するときの権利の決め方は、SNS運用代行の選び方でも触れています。
決めた内容を1枚の運用ルールにまとめる
ここまでの内容を1枚にまとめると、ブランドの運用ルール(ブランドガイド)になります。社内の担当者や外部のパートナーに渡せる形にしておくと、運用が属人化しにくくなります。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| ブランドの約束 | 誰に何を約束するかの一文、差別化の軸 |
| ビジュアル | ロゴの使い方、色(メイン・サブ)、フォント、写真の雰囲気、テンプレートの保管場所 |
| トーン | 一人称、文体、絵文字の使い方、使う言葉・避ける言葉、例文 |
| 投稿テーマ | 3〜5つの柱と、それぞれの投稿の型 |
| プロフィール | 名前、ユーザー名、自己紹介、リンク先の方針 |
| 運用の決まり | 承認の流れ、素材の権利の確認方法、困ったときの連絡先 |
SNSブランディングのよくある失敗
| 失敗例 | 対処 |
|---|---|
| 見た目だけ整えて、約束が決まっていない | 先に4つの問いに答え、一文にする |
| 担当者ごとに文体や色がばらばら | ブランドガイドとテンプレートを共有し、仕組みで統一する |
| 薄い文字や小さい文字で読めない | スマホ画面で確認し、文字と背景の差をつける |
| 名前やロゴを決めてから権利を調べる | 決める前に商標や素材の権利を確認する |
| 統一を意識しすぎて、お客様の反応を見ない | 数か月ごとに反応を見て、ルールを見直す |
よくある質問(Q&A)
Q. ブランドが固まる前でも、SNSを始めてよいですか?
A. 始めてかまいません。ただし、最初に「誰に何を約束するか」の一文だけは決めておくと、後の修正が少なくなります。運用しながら、数か月ごとに見直す方法もあります。
Q. ブランドカラーはどう決めればよいですか?
A. ロゴの色や既存のコーポレートカラーを軸にするのが基本です。色の印象は人によって受け取り方が違うため、「この色はこういう印象を与える」と決めつけず、自社のお客様の反応や、文字の読みやすさを確認しながら選んでください。
Q. 担当者が複数いても、見た目を統一するにはどうすればよいですか?
A. ブランドガイドを1枚にまとめ、テンプレートや色・フォントを共有できる仕組みを使います。Canvaのブランドキットのように、決めた素材を1か所にまとめる方法があります。
まとめ
SNSブランディングは、「誰に何を約束するか」を先に決め、ビジュアル・トーン・投稿テーマの3要素にそろえていく作業です。色や素材は仕組みで統一し、名前・ロゴ・素材の権利は最初に確認します。決めた内容は1枚の運用ルールにして、数か月ごとに見直しましょう。
最初の一歩として、今日中に「誰に・何を約束するか」を一文で書き出してみてください。

