投稿を続けているのに、問い合わせや購入につながらない。そんなとき、投稿の質を疑う前に確認したいのが、その投稿は、お客様のどの段階に向けたものかという点です。商品を知らない人に細かい仕様を伝えても、すでに比べている人に雰囲気の投稿ばかり見せても、次の一歩にはつながりにくくなります。
この記事では、カスタマージャーニーの考え方を使って、SNSの接点(お客様と自社が出会う場所)を段階ごとに整理し、各段階でどんな施策を置き、何の数字を見るかを一枚の表にまとめる方法を解説します。定義は総務省サイト掲載の公的な実践ガイドなどで確認できた範囲で書き、段階の区切りやテンプレートは「当社の一例」です。
この記事の3行まとめ
① カスタマージャーニーは、体験を時系列で整理し、各接点での行動や感情の変化を見える化する手法(総務省サイト掲載の実践ガイドの説明)
② SNS接点マップは「段階×接点×施策×見る数字」を一枚にまとめ、投稿の偏りと、段階の「つなぎ目」の抜けを見つけるために使う
③ 行動や感情の欄は、まず仮説として書き、お客様の声や数字で確かめながら直す
カスタマージャーニーとは:体験を時系列で見える化する
総務省のサイトに掲載されている公共サービス向けの実践ガイドは、カスタマージャーニーマップを、ユーザーがサービスや製品を利用する際の体験を時系列で整理し、各接点での行動や感情の変化を可視化する手法と説明しています。利用者の視点から課題を発見し、より良いサービス設計や改善に役立てられるとされています。(出典:総務省サイト掲載「実践ガイド ステークホルダーマネジメント」)公共サービス向けの資料ですが、用語の説明は民間の取り組みでも参考になります。
同じく総務省サイト掲載の別の実践ガイドでは、マップは利用者の状況や感情に基づいて記入するよう示されています。(出典:総務省サイト掲載「サービスキャンバスの使い方 実践ガイド」)また、中小機構J-Net21「事業コンセプトの書き方」は、商品・サービスを提供する仕組みを示すとき、お客さんの気持ちの変化やメリットも、フローチャートで加えるとわかりやすくなると説明しています。例として、レストランで料理を知ってもらい、興味を持った人が食材を買い、さらに調理方法を学ぶ料理教室へ通ってもらう流れが挙げられています。(出典:中小機構J-Net21「事業コンセプトの書き方」)お客様が「知る」から「続ける」へ進む道すじを、気持ちとあわせて描く点が、ジャーニーの考え方の中心です。
SNS接点マップの作り方(5つのステップ)
- ペルソナを決める:誰の道すじを描くかを先に決めます。作り方はペルソナ設定とSNSのターゲット設計をご覧ください。
- 段階を決める:「知る・調べる・比べる・申し込む・続ける」の5段階は当社の一例です。業種により、「来店する」など段階を足して構いません。
- 各段階の行動と気持ちを仮説で書く:「何をして、どう感じているか」を一言で書きます。確認できていないことは「仮説」と明記します。
- 接点と施策を書く:SNSの中だけでなく、検索、店頭、口コミなどSNSの外の接点も書き出します。その上で、段階ごとにSNSで担う役割を決めます。
- 見る数字を決める:段階ごとに、公式の管理画面で見られる数字と、自社で数える数字を分けて書きます。
接点マップのテンプレート(当社の一例)
次の表は、架空のオンライン・コーヒー豆店「豆店C」の記入例です。内容はすべて説明用の架空の例で、実在の店舗や実績ではありません。
| 段階 | 行動・気持ち(仮説) | SNS内の接点 | SNS外の接点 | 施策の例 | 見る数字 |
|---|---|---|---|---|---|
| 知る | コーヒーの情報をなんとなく眺めている | リール、フィード投稿 | 友人の話 | 淹れ方の短い解説を出す | 閲覧数、閲覧者数(Instagram) |
| 調べる | 気になって、この店のことを知りたくなる | プロフィール、保存した投稿 | 検索、商品ページ | プロフィールに店の特徴と価格帯を書く | 保存を含むインタラクション、フォロワーの増減 |
| 比べる | 他店と迷い、失敗したくない | ハイライト、コメントや質問への返信 | レビューサイト | よくある質問をまとめる | 問い合わせ・DMの件数(自社で記録) |
| 申し込む | 買う理由を探している | プロフィールのリンク、LINEのメッセージ | 商品ページ、決済 | 入口のリンクを1か所に整理する | 注文数(自社)、LINEの友だち追加経路 |
| 続ける | また買うか迷っている | LINE公式アカウント、ストーリーズ | 同梱のカード | 次回に向けたお知らせを送る | リピート注文数(自社)、友だち追加数・ブロック数(LINE) |
「見る数字」のうち、閲覧数、閲覧者数、インタラクション、フォロワーの増減は、Instagramのインサイトの項目です。英語版ヘルプでは、閲覧数はコンテンツが再生または表示された回数、閲覧者数は1回以上見たユニークなアカウント数、インタラクションはいいね・コメント・保存・シェアなどの行動の数と説明されています。保存数は、このインタラクションの一部です。(出典:Instagramヘルプ(About Instagram insights・英語))一方、問い合わせ件数や注文数などは、SNSの管理画面では分からないため、自社で数える必要があります。
段階の「つなぎ目」を確認する
マップを埋めたら、段階と段階の「つなぎ目」を確認します。投稿が段階ごとに揃っていても、次に進む入口が見つからなければ、お客様はそこで止まってしまうからです。当社では、次の3点を確認することをご提案しています(当社の一例)。
- 次の入口が見えるか:「調べる」段階の投稿から、プロフィールや商品ページへ進む手がかりがあるか。リンクの置き場所はリンク in bio の最適化を参考にしてください。
- 入口が複数に分かれていないか:LINE、フォーム、電話など入口が乱立していると、お客様が迷います。メインの入口を1つ決めます。
- 戻れるか:「比べる」段階の人が、不安を解消する投稿(よくある質問など)に戻れるか。ハイライトや固定投稿の活用を検討します。
SNSの中で測れる接点、測れない接点
すべての接点が数字で見えるわけではありません。測れない接点は、お客様への聞き取りなどで補います。
| 接点 | 数字で見られるか | 見方・補い方 |
|---|---|---|
| Instagramの投稿・リール | 見られる(公開アカウントの場合) | インサイトで閲覧数・閲覧者数・インタラクション。過去90日以内の期間で確認。(出典:Instagramヘルプ(インサイトを見る)) |
| LINE公式アカウント | 見られる | 友だち追加数・ブロック数・友だち追加経路。経路は日ごとに20以上の追加がないと数値が表示されない。(出典:LINEヤフー for Business「LINE公式アカウント 分析 – 友だち」) |
| 友人の口コミ、店頭での会話 | 数字では見られない | 注文時に「どこで知りましたか」と聞く、などの方法で補う(当社の例) |
| 検索や商品ページでの行動 | SNSの管理画面では見られない | 自社サイト側の計測で補う |
LINE公式アカウントの友だち追加経路は、友だちが追加やブロックをした経路を見られる機能です。ただし、前述の20件の条件があるため、追加が少ない時期は日次の比較には向きません。期間を長くとって見ましょう。
投稿の偏りを確認する
マップが完成したら、直近1か月の投稿を段階に振り分けて数えます。たとえば「知る」の投稿ばかりで、「比べる」「申し込む」が空欄なら、お客様が不安を解消する場所がない可能性があります。逆に「申し込む」の告知ばかりなら、知らない人に出会える投稿が足りないかもしれません。偏りの原因を決めつけず、お客様の声と数字で確かめてから施策を足しましょう。聞き取りで個人情報を集める場合の注意はペルソナ設定の記事で整理しています。目的との対応はSNSマーケの目的設計5パターンもご覧ください。
接点マップづくりのよくある失敗
| 失敗例 | 対処 |
|---|---|
| 段階を細かく分けすぎて、埋まらない | 最初は「知る・比べる・申し込む」の3段階の簡易版から始める |
| 気持ちの欄を想像で埋めて、そのままにする | 「仮説」と明記し、問い合わせの内容などで確かめる |
| SNS内の接点だけを書く | 検索、店頭、口コミなどSNS外の接点も書き出す |
| 施策を書くだけで、数字を決めない | 段階ごとに見る数字を1〜2個決める |
| 入口が乱立してお客様が迷う | メインの入口を1つ決め、プロフィールで統一する |
よくある質問(Q&A)
Q. カスタマージャーニーを作るのに、時間がかかりそうです。
A. 最初は簡易版で構いません。「知る・比べる・申し込む」の3段階と、「SNS内の接点」「見る数字」の2列だけの表を作るところから始められます。精度は運用しながら上げていきます(当社の考え方の例)。
Q. BtoBでも使えますか?
A. 使えます。BtoBでは、情報を調べる担当者と、決める責任者が別になることがあります。その場合は、立場ごとに別のマップを作る方法があります(一般的な考え方の例)。
Q. ペルソナがない場合は、どうすればよいですか?
A. まず仮のペルソナを1人決め、「仮説」と書いてマップを作ってみる方法があります。運用して得た数字やお客様の声で、少しずつ事実に置き換えてください。
まとめ
カスタマージャーニーは、お客様が「知る」から「続ける」へ進む体験を時系列で整理し、各接点での行動と気持ちを見える化する手法です。SNS接点マップでは、段階×接点×施策×見る数字を一枚にまとめ、投稿の偏りと、段階のつなぎ目の抜けを見つけます。気持ちの欄は仮説から始め、お客様の声と数字で確かめましょう。
最初の一歩として、今週中に3段階の簡易版を1枚作り、直近1か月の投稿を段階ごとに数えてみてください。全体の位置づけはSNSマーケ戦略書の作り方で整理しています。

