「競合のアカウントは何をどのくらい投稿しているのか」「自社に足りないものは何か」。SNS運用を続けると必ず出てくる疑問です。自社の数字だけでは良し悪しを判断しにくく、競合という「ものさし」を持つことで、自社の強みと、まだ空いているポジションが見えてきます。
ただし競合分析は、数字を集めて表にして終わりになりがちです。また、他社を調べる以上、各SNSで見られる範囲とやってはいけない集め方(自動収集や無断転載)を知らないと、規約違反やトラブルにつながります。この記事では、競合の選び方、見る項目、公開情報で確認できる範囲、分析シート、施策への落とし込みまでを整理します。仕様や規約は公式の原文で確認できた範囲を書き、運用のコツは「例」「目安」と明記しています。
この記事の3行まとめ
① 目的は「真似」ではなく、自社の立ち位置と次の打ち手を決めること。先に「何を決めたいか」を一文で書く
② 見られるのは公開情報だけ。他社のインサイトは見られないので、見えない数字は推測で埋めない
③ 自動収集(スクレイピング)や無断転載は避け、手作業の記録と施策への落とし込みまでを1セットにする
競合アカウントの選び方:直接競合・間接競合・目標とするアカウント
SNSでは、同じ商品を売る会社だけでなく、同じお客様の関心を奪い合うアカウントも競合です。次の3タイプで選ぶと偏りが減ります(分け方は一般的な考え方の例です)。
| タイプ | 意味 | 選び方の例 |
|---|---|---|
| 直接競合 | 同じ商品・サービスを同じ地域や顧客に提供 | 同じエリアの同業店、同じ価格帯の同業他社 |
| 間接競合 | 商品は違うが、同じ顧客層・悩みに向けて発信 | 美容室なら美容系の発信者、学習塾なら教育系の発信者 |
| 目標とするアカウント | 業種が違っても、目指す運用に近い | 同じSNSで成果を出している他業種の企業 |
数は欲張らず、合計3〜5アカウント程度(目安)に絞ります。更新が長く止まっているアカウントや、規模が桁違いのアカウント(数字ではなく「やり方」を見る対象にする)は外すか、扱いを分けましょう。目的を決めたら、見る指標も合わせて決めます。考え方はSNS運用のKPI設定完全ガイドをご覧ください。
競合分析で見る8つの項目
| 項目 | 見るポイント |
|---|---|
| フォロワー数 | 人数そのものより、同じ期間での増え方 |
| 投稿頻度 | 直近1か月などで、週に何回・どの曜日や時間帯か |
| 投稿の型 | 写真、カルーセル、動画など。テーマ(お役立ち、事例、お知らせ等)は型と分けて記録 |
| 反応 | 画面に表示されているいいね・コメント・再生数。表示されない指標は推測しない |
| プロフィール | 自己紹介、アイコン、固定投稿から「誰に何を約束しているか」を読む |
| 導線 | リンク先、LINE登録やECへの誘導、投稿内の呼びかけ |
| ハッシュタグ・キーワード | 数を真似るのでなく、どんな探され方を狙っているかを読む |
| 広告の有無 | 出稿中の広告の見た目と訴求(見られる範囲は次章) |
フォロワー数が違うアカウントを比べるときは、(いいね数+コメント数)÷フォロワー数のように比率にすると比べやすくなります。これはここで紹介する一例の簡易指標で、各SNS公式の「エンゲージメント率」とは定義が異なります。公式指標の見方はSNSのエンゲージメント率を改善する方法も参考になります。
公開情報で見られる範囲と見られない範囲
仕様は変わることがあるため、調べる際は最新の公式ページも確認してください。
Instagram:投稿は見られるが、インサイトは見られない
公式ヘルプでは、公開アカウントのプロフィールや写真・動画はInstagramの利用者全員が見られ、非公開アカウントはフォロワーが見られると説明されています。また、ビジネスプロフィールは非公開にできないとされています。(出典:Instagramヘルプ(公開と非公開の違い))つまり企業の競合アカウントなら、投稿内容や投稿頻度、画面上に表示される反応の数は、基本的に外から確認できます。
一方、インサイト(リーチなどの詳しい数値)は、公式ヘルプでは自分のダッシュボードから見る機能として案内され、過去90日以内の期間を選べると書かれています。他のアカウントのインサイトを見る手順は載っていません。(出典:Instagramヘルプ(インサイト))競合のリーチや保存数は「分からないもの」として扱いましょう。自社分の見方はSNS効果測定の方法で解説しています。
X:分析ダッシュボードは自社の投稿向け
Xの公式ヘルプでは、Post Activity Dashboardで、自分が投稿した各ポストのインプレッション数やエンゲージメント率などを確認できると説明されています。エンゲージメント率は「エンゲージメント数÷インプレッション数」と定義されています。(出典:Xヘルプ(Post Activity Dashboard))競合のインプレッションを見る機能としては案内されていないため、競合は画面上に見える数(いいね、リポスト、返信など)の範囲で分析します。
TikTok:Creative Centerの「トップ広告」
公式ヘルプによると、トップ広告はパフォーマンスの高いクリエイティブの事例集で、地域・業種・キャンペーン目的などで絞り込めます。掲載される広告は、広告主が広告マネージャーで承認したものです。(出典:TikTokヘルプ(トップ広告)、TikTok Creative Center)つまり競合の広告を網羅的に調べるものではなく、業界の好事例を参考にするツールと考えられます。
Meta広告ライブラリ:FacebookとInstagramの出稿中広告
Metaの公式ヘルプでは、広告ライブラリは誰でも閲覧・検索でき、語句・名称・ページで検索できると説明されています。表示されるのは、Metaのテクノロジー全体で掲載されているアクティブな広告と、FacebookとInstagramでタイアップ投稿ラベル付きで掲載されているアクティブな公開ブランドコンテンツです。年齢制限のある広告は、制限年齢未満の人やログインしていない人にはクリエイティブが表示されません。(出典:Meta広告ライブラリ ヘルプ)このヘルプには広告の成果を確認できる記載はないため、見るのは「どんな訴求・見た目で、どこへ誘導しているか」までにしましょう。
SNS競合分析のやり方と分析シート
- 目的を決める:例「次の3か月に増やすInstagramの投稿の型を決める」
- 競合を選ぶ:3タイプから合計3〜5アカウント程度(目安)
- 期間をそろえて手作業で記録:直近1〜3か月(目安)。記録日も残す
- 反応の高い投稿を読み解く:各社数件ずつ、テーマ・型・書き出し・導線の共通点を探す
- 自社との差分を出し、施策にする:「競合がやっていて自社がやっていないこと」「自社だけができること」を書く
当社がご提案する分析シートの一例です。列は目的に合わせて増減してください。
| 列名 | 記入例 |
|---|---|
| アカウント名・URL・タイプ | 正式名称、プロフィールURL、直接/間接/目標 |
| 記録日・対象期間 | 2026年10月1日時点、直近1か月 |
| フォロワー数・投稿頻度 | 人数、期間内の投稿数(種類別) |
| 主な投稿の型・テーマ | 動画中心、お役立ち中心など |
| 反応の高い投稿 | 上位3件程度のURL、反応の数、選んだ理由 |
| 強み・弱み | 観察した事実とセットで1行ずつ |
| 自社に取り入れる点 | 自社の素材・言葉に置き換えた案 |
他社の画像や動画は貼らず、URLと自分の言葉のメモで残すと、著作権の面でも安全です(理由は後述)。
分析結果を自社の施策に落とし込む
整理の道具として、3C(顧客・競合・自社)やSWOT(強み・弱み・機会・脅威)を使う方法があります(いずれも一般的な考え方の例)。ただし枠を埋めること自体が目的ではありません。「来月の投稿で何を変えるか」まで書き切ってください。切り口は次の3つです。
- 競合が手薄な領域を狙う:扱われていないテーマや形式(例:静止画中心の市場なら短い動画で解説)を試す
- 成功パターンの「構成」を自社の素材で作り直す:導入・見せ方・締め方を参考に、中身は自社の事例や現場の様子にする。文章や画像を写すことではありません
- 自社の強みを一貫して伝える:競合と差がある点をプロフィールと投稿の両方で繰り返す
施策は次の1〜2か月で2〜3個(目安)に絞り、「何がどうなれば効果ありとみなすか」を決めておくと振り返りやすくなります。報告の仕方はSNSレポートの作り方が参考になります。
やってはいけないこと:規約・著作権・個人情報
見られる情報でも、集め方や使い方によっては規約違反や権利侵害になり得ます。以下は公式の原文で確認できた範囲です。個別の判断は、最新の規約や専門家(弁護士など)・所管窓口に確認してください。
スクレイピング・自動収集は規約で制限されている
- Instagram:運営の明示的な許可なく、自動化された手段でアカウントを作成したり、情報にアクセス・取得したりする行為が禁止行為に含まれ、ログイン中かどうかは問わないとされています。取得したデータの販売・購入も禁止です。(出典:Instagram利用規約)
- X:公開インターフェース以外でのアクセスを制限し、事前の書面同意なくクローリングやスクレイピングを行うことを明示的に禁止しています。(出典:X利用規約)
- TikTok:禁止事項に、情報を収集するための自動化されたスクリプトの使用が挙げられています。(出典:TikTokサービス規約)
違反時はコンテンツ削除やアカウント停止などの措置が各規約に定められているため、自社アカウントへの影響も考え、「調べるのは手作業」を基本にします。外部ツールを使う場合は、各SNSの規約の範囲で動くものか提供元に確認してください。
他社の投稿の無断転載は著作権の問題になり得る
文化庁は、SNSへの投稿は「一般への公開」であり、学校や家庭内の例外ルールは通用せず、他人の作品をネットに載せるには原則として権利者の許可が必要だと説明しています。(出典:文化庁)ネットで見つけた画像を無断で使ってよいというのも誤解だとされています。(出典:文化庁(OK?NG?))著作権法には引用の例外があり、公正な慣行に合致し、報道・批評・研究などの目的上正当な範囲内であることが条件です。(出典:著作権法第32条)競合の画像を自社の投稿やレポートに載せてよいかは個別の判断になるため、専門家に確認してください。
個人の情報を集めすぎない
個人情報保護法では、個人情報は生存する個人に関する情報で、氏名などにより特定の個人を識別できるものとされ、偽りその他不正の手段による取得は禁止されています。(出典:個人情報保護法)競合分析で必要なのは運用の傾向であり、個人名の発信者や、コメントしている個人のアカウントを名簿のように集めることは避けましょう。判断に迷う場合は個人情報保護委員会などの窓口や専門家に確認してください。
見直しの頻度
目安として、月1回は軽く定点観測(フォロワー数、投稿頻度、上位投稿を追記)、3か月に1回は競合の選び直しと施策への反映、競合のリニューアルや大きなキャンペーンがあったときは随時記録します。毎週詳しく調べると続かないため、深さを変えて続けるのが現実的です。
競合分析のよくある失敗
| 失敗例 | 対処 |
|---|---|
| 数字を比べて終わる | 最後に「次の1〜2か月で試すこと」を2〜3個書く |
| フォロワー数だけを見る | 反応の比率、投稿の型、導線も合わせて見る |
| 真似だけをする | 構成だけ参考にし、中身は自社の素材と言葉にする |
| 見えない数字を推測で埋める | インサイトなどは「不明」と書き、見える範囲で比べる |
| 自動収集や無断転載をする | 手作業の記録とURL・メモの保存を基本にする |
よくある質問(Q&A)
Q. 競合のインサイトやリーチ数は見られますか?
A. 見られません。Instagramのインサイトは自分のダッシュボードから見る機能として案内されており、Xの分析ダッシュボードも自分の投稿のデータ用です。競合は画面に表示されている情報の範囲で分析してください。(出典:Instagramヘルプ(インサイト)、Xヘルプ(Post Activity Dashboard))
Q. 競合の広告は見られますか?
A. FacebookとInstagramの出稿中の広告はMeta広告ライブラリで確認できます。TikTokのトップ広告は、競合の網羅ではなく好事例の集まりです。いずれも広告の成果は分かりません。(出典:Meta広告ライブラリ ヘルプ、TikTokヘルプ(トップ広告))
Q. どのSNSから分析を始めればよいですか?
A. 自社が運用しているSNSと、お客様が主に使っているSNSからが目安です。1つのSNSで3〜5アカウント程度を記録し、慣れてから広げると続けやすくなります。
Q. 競合の投稿を参考に、似た投稿をしてもよいですか?
A. アイデアや構成を参考にすることと、文章や画像をそのまま使うことは別です。他人の作品をネットに載せるには原則として権利者の許可が必要とされています。自社の素材と言葉で作り直しましょう。(出典:文化庁)
まとめ
競合分析は、競合を3〜5アカウント程度選び、決めた項目を手作業で記録し、自社との差分から次の施策を決める作業です。見られるのは公開情報までで、インサイトは外から分かりません。見えない数字は推測せず、自動収集や無断転載、個人情報の集めすぎも避けましょう。
最初の一歩として、今週中に競合を3アカウント選び、投稿頻度と反応の高い投稿を3件ずつ分析シートに記録してみてください。
参考情報・出典
- Instagramヘルプセンター「利用規約」
- Instagramヘルプセンター「Instagramの公開アカウントと非公開アカウントの違い」
- Instagramヘルプセンター「Instagramでアカウントとコンテンツのインサイトを見る」
- X Ads Help Center「Post and Video Activity Dashboards」(英語)
- X利用規約
- TikTok for Business ヘルプ「トップ広告について」
- TikTok Creative Center「トップ広告」
- TikTokサービス規約
- Metaビジネスヘルプセンター「Meta広告ライブラリについて」
- 文化庁「著作権について知っておきたい大切なこと」
- 文化庁「著作権、これってOK?NG?」
- e-Gov法令検索「著作権法」(第32条)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(第2条・第20条)

