お客様が自分から投稿してくれる写真や動画(UGC=ユーザー生成コンテンツ)は、商品がどんな場面で使われているかを伝える素材になります。ただ、「集める」「使う」「表示する」のそれぞれに守るべきルールがあり、場当たり的に進めると、ステマ規制や著作権のトラブルにつながります。
この記事は、UGCを集める導線の設計と、事前のルール・運用の仕組みづくりに絞って解説します。景品付きの参加型企画はユーザー参加型キャンペーン設計、個別の投稿を使うときの許可の取り方はリポスト活用術をご覧ください。仕様は2026年10月時点で公式の原文を確認できた範囲で書き、運用のコツは「例」と明記しています。
この記事の3行まとめ
① 集められるのは、公開アカウントの投稿や、自社をタグ付けした投稿。非公開アカウントの投稿はハッシュタグページに載らず、見つけにくい
② 投稿の「お願い」は、内容を指示せず、自由に書いてもらう形が基本。具体的な感想の文言まで条件にすると、広告の扱い(ステマ規制)になりうる
③ 投稿者の権利は投稿者にある。紹介する前の許可と、使った記録(台帳)をセットで運用する
UGCはどこに生まれ、どう見つけるか
公式ヘルプで確認できた範囲を整理します。
| 場所・仕組み | 確認できた内容 |
|---|---|
| ハッシュタグ | 公開アカウントの投稿にハッシュタグを付けると、ハッシュタグページに表示される。非公開アカウントの利用者が付けても、投稿はハッシュタグページに公開されない。1つの投稿に使えるタグは最大5個 |
| 公開アカウントの投稿 | プロフィールの投稿は誰でも閲覧でき、検索結果・発見・ハッシュタグ・位置情報のページにも表示される。非公開は表示されない |
| タグ付け | 自分がタグ付けされた投稿は、手動承認の設定にしていてもお知らせが届く(プロフィールへの表示は選べる) |
(出典:Instagramヘルプ「ハッシュタグを使用する」、Instagramヘルプ「公開アカウントと非公開アカウントの違い」、Instagramヘルプ「タグ付けされた投稿を手動で承認する」)つまり、非公開アカウントのお客様の投稿は、ハッシュタグでは集まりにくいということです。自社をタグ付けしてもらう導線も併用しましょう。ハッシュタグの選び方はハッシュタグ戦略 完全版をご覧ください。
なお、Instagramの利用規約は、運営の明示的な許可なく自動化された手段で情報にアクセス・取得することを禁止しています。(出典:Instagram利用規約)ツールで他人の投稿を自動収集する運用は避け、手作業で確認する前提で設計しましょう。
投稿したくなる導線を、顧客接点ごとに設計する
以下は当社の設計例です。効果の大きさは業種や商品で異なるため、まず1〜2接点から試して比べてください。
| 接点 | 声かけ・仕掛けの例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 店頭・来店時 | 「よろしければ撮影・投稿もどうぞ」と案内。タグとハッシュタグをPOPやQRコードで示す | 撮影が他のお客様に迷惑にならないルールを決める |
| 購入後・納品時 | 同梱カードに、自社のアカウント名と投稿の案内を書く | 投稿は任意と明記し、割引などの見返りを結びつけない |
| 予約・購入完了の連絡 | 完了メッセージの末尾に、使い方の写真を募る一文を添える | 感想の内容は指定しない |
| プロフィール・ハイライト | 「お客様の投稿」ハイライトに、投稿のルール(タグ、紹介する場合の連絡方法)を載せる | ルールは短く、投稿者の権利に配慮した表現にする |
合言葉となるタグ(ブランドタグ)は、最大5個という制限があるため、1つに絞る方が定着しやすくなります(運用上の目安)。他のハッシュタグとの組み合わせ方はハッシュタグ戦略 完全版で整理しています。
「お願い」の仕方とステマ規制の線引き
消費者庁は、令和5年10月1日からステルスマーケティング(広告であることを隠した表示)が景品表示法違反になったと案内しています。SNS投稿やレビュー投稿も対象です。(出典:消費者庁「ステルスマーケティング」)お客様の投稿をお願いするとき、消費者庁のQ&Aでは次のように整理されています。
| ケース | 消費者庁Q&Aの考え方 |
|---|---|
| 試供品を配るとき「感想をSNSに投稿してください」と声かけ(内容の指示なし) | 通常は「事業者の表示」に当たらず、告示に違反しないと考えられる |
| 口コミ投稿を条件にサービスを割引 | 通常は当たらない。ただし「星5」や、推奨するコメントを条件にすると当たる |
| ハッシュタグ付きで感想を投稿した人から抽選 | 投稿内容が抽選結果に影響しない場合は通常当たらない。「#毎日食べたい美味しさ!」のように具体的な感想のハッシュタグを条件にすると当たる |
| 特定のインフルエンサーに商品を無償提供し、投稿を依頼 | やり取りの内容や取引関係などによっては当たる場合がある |
(出典:消費者庁「ステマQ&A」)「事業者の表示」に当たる場合は、「広告」「PR」などで事業者の表示であることを明瞭にしないと告示違反になります。つまり、お客様の自由な感想を募る形にしておくのが安全です。
景品を付ける場合は、景品表示法の景品規制の対象になりえます(詳しくはユーザー参加型キャンペーン設計)。また、Metaのコミュニティ規定(スパム)には、「特定のハッシュタグの使用などのエンゲージメントのために」金銭的価値のあるものを交換することの禁止と、その例として、エンゲージメントと引き換えにプレゼントが当たるチャンスをオファーする行為が挙げられています。(出典:Metaコミュニティ規定「スパム」)景品付きの企画は、最新の規定を確認してから設計してください。
許諾の取り方:事前ルールと個別確認の二段構え
文化庁の解説によると、著作権は著作物が創られた時点で自動的に付与されます。(出典:文化庁「著作権制度の解説」(令和8年度版))また、Instagramの利用規約でも、投稿の権利は利用者に残り、Instagramにライセンスが付与される仕組みと説明されています。第三者の企業への許諾は、確認した範囲では書かれていません。(出典:Instagram利用規約)そのため、お客様の投稿を自社で紹介するには、原則として投稿者の許諾が必要と考えて運用します。
- 事前ルール:募集文やプロフィールに「投稿を当店の公式アカウントで紹介する場合があります。紹介前にDMでご連絡します」と書いておく(例)
- 個別確認:実際に使う前に、投稿ごとに許可を得る。確認する項目や文面はリポスト活用術にまとめています
- 範囲内の利用:許諾を得た人は、許諾に係る利用方法と条件の範囲内で利用できます(著作権法第63条)。広告やサイトなど、範囲を超える使い方は別に確認します。(出典:著作権法)
事前ルールの告知だけで、投稿者の許諾として十分かどうかは、確認した公式資料からは判断できませんでした。事前告知は「お知らせ」、個別の許可は必ず取るという二段構えにすると、安全です。個別の判断は弁護士などの専門家に確認してください。
運用ルールと台帳:誰が見ても同じ判断になるように
UGCの活用は、担当者の感覚で決めると、ブレやトラブルのもとになります。次のような社内ルールを文書にしておきましょう(例)。
- 採用基準:商品が分かる、ブランドの方針に合う、他の人の顔や個人情報が写っていない、投稿者が不快に感じない使い方になる
- 選び方の記録:恣意的に好意的な投稿だけを選んでいないか。お客様の声として載せる場合の考え方は、消費者庁のQ&Aで確認できます(出典:消費者庁「ステマQ&A」)
- 取り下げ対応:削除の依頼があれば、担当者と期限を決めて速やかに外す
記録用の台帳(スプレッドシートなど)の列の例です。
| 列 | 記入例 |
|---|---|
| 投稿のURL・投稿者アカウント | 公開投稿のURL、@アカウント名 |
| 確認日・許可の取得方法 | DM、メール。返信の保存場所 |
| 使う場所・期間 | 自社ストーリーズ、2か月間 など |
| クレジット表示 | @アカウント名を添える |
| 取り下げ | 依頼日、対応日 |
応募フォームなどで氏名・住所を集める場合は、個人情報保護法に注意します。事業者は利用目的をできる限り特定し(第17条)、取得したら速やかに利用目的を本人に通知または公表する必要があります(第21条)。(出典:個人情報保護法)
UGC施策のよくある失敗
| 失敗例 | 対処 |
|---|---|
| 非公開アカウントの投稿を探して集めようとする | 公開投稿とタグ付けを対象にし、自動収集は避ける |
| 「#〇〇おいしい!」など感想の文言まで指定する | ブランドタグだけを案内し、感想は自由にしてもらう |
| 許可なく広告や自社サイトに使う | 紹介前に個別に許可を得て、使う場所を伝える |
| 台帳がなく、取り下げに対応できない | URL・許可日・範囲・期限を記録する |
よくある質問(Q&A)
Q. ハッシュタグを案内すれば、UGCは自然に集まりますか?
A. 公開アカウントの投稿はハッシュタグページに表示されますが、非公開アカウントの投稿は載りません。投稿の件数が集まるかは、商品やお客様次第で保証はできません。タグ付けの導線も併用してください。(出典:Instagramヘルプ「ハッシュタグを使用する」)
Q. 投稿してくれた人に割引やプレゼントを渡してもよいですか?
A. 投稿を条件にした割引は、内容の指示がなければ通常は「事業者の表示」に当たらないと消費者庁Q&Aは整理しています(口コミ投稿の設例)。ただし、感想の文言を条件にすると当たります。景品規制やMetaの規定も関わるため、ユーザー参加型キャンペーン設計で確認してください。飲食店の口コミは飲食店の口コミ・UGC施策も参照してください。(出典:消費者庁「ステマQ&A」)
Q. お客様の投稿を広告に使うには?
A. 許諾の範囲に広告が含まれているかを個別に確認してください。許諾を得た人は、許諾に係る利用方法と条件の範囲内でのみ利用できます。(出典:著作権法)
まとめ
UGCは、公開投稿とタグ付けを導線として設計し、お願いは内容を指示しない形にします。紹介する前に投稿者の許可を得て、台帳に記録する。この流れを仕組みにすると、安心して続けられます。
まず、顧客接点を1つ選び、ブランドタグと「紹介する場合の連絡方法」を案内する文面をつくってみてください。

