地域観光のSNSプロモーション

地域観光のSNSプロモーションのアイキャッチ画像

地域観光のSNSは、1軒の宿や店ではなく「この地域に行きたい」と思ってもらうための発信です。宿・飲食・体験・交通が別々の事業者で、誰が何を発信するかが決まっていないと、投稿がばらばらの寄せ集めになりがちです。

この記事では、DMO・観光協会・自治体・事業者の役割分担、地域ハッシュタグと位置情報、来訪者の投稿(UGC)の扱い、インフルエンサー招待の表示ルール、混雑やマナーの伝え方を整理します。数字は観光庁・JNTO(日本政府観光局)の公式ページで原文を確認できたものだけを使っています。

この記事の3行まとめ

① 観光庁のDMO登録制度のガイドラインは、受入環境の整備が不十分なまま情報発信に偏らないよう求めている。発信の前に「来てもらって困らない状態か」を確認する
② 地域共通のタグ・位置情報・コラボ投稿で、事業者の投稿を地域の発信につなげる
③ 招待や無償提供による投稿は広告と分かる表示を。来訪者の投稿を使うときは許可を得る

地域観光のSNSプロモーション:誰が何を担うか

観光庁の登録制度では、DMO(観光地域づくり法人)は「広域連携DMO(地方ブロック単位)」「都道府県DMO」「地域DMO(単一または複数の市区町村)」の3区分で登録され、観光地域づくりの司令塔として戦略の策定と遂行を担うと説明されています。(出典:観光庁「DMOの登録制度」)同省のガイドラインは、受入環境整備などの着地整備が不十分なまま情報発信やプロモーションに偏重した施策を行っているDMOが見受けられるとして、まず着地整備を優先するよう求めています。また、情報発信は観光地経営戦略で設定したターゲットとの整合を踏まえて行うこととされています。(出典:観光庁「DMO登録制度ガイドライン」)

担い手公式資料での位置づけSNSでの役割(例)
DMO観光地域づくりの司令塔(観光庁「DMOの登録制度」)ターゲットとコンセプトを決め、共通タグや投稿ルールを管理する
自治体・観光協会DMOは自治体と連携して観光地域づくりを担う。非常時には旅行者へ適切な情報提供を行うことが期待される(観光庁「DMO登録制度ガイドライン」)イベント告知、道路・天候・災害時の案内
宿・飲食・体験事業者提供する商品・サービスの当事者営業時間・空き状況・予約方法など最新の実情報
JNTO15言語のサイトと、22市場向けFacebook・21市場向けInstagram・中国市場向け微博などで情報提供(JNTO「ウェブサイトやSNSでの情報提供」)海外向け発信での連携。DMO制作の画像・動画をJNTOが活用する例がガイドラインに挙がる(観光庁「DMO登録制度ガイドライン」)

数字で確認する:国内と海外の旅行需要

国内客の消費額が大きいため、国内向けの発信も設計に入れる考え方ができます。海外向けはインバウンド向けSNS運用で扱います。

地域ハッシュタグ・位置情報・コラボ投稿の使い方

  • ハッシュタグ:Instagramのヘルプでは、公開アカウントが投稿にタグを付けると該当の検索結果に表示され、タグをタップするとそのタグの付いた投稿一覧が見られると案内されています。1つの投稿に使えるタグは最大5個とされています(仕様は変わるため公式で確認)(Instagramヘルプ「ハッシュタグ」)。地域共通のタグは短くし、事業者・観光協会・来訪者が同じタグを使う形が運用しやすいでしょう(運用上の例)。選び方はハッシュタグ戦略 完全版も参考にしてください
  • 位置情報:ビジネスの所在地をInstagramの地図に出すには、Facebookページで住所を編集してアカウントをリンクします。48時間以内に地図に表示され、投稿やストーリーズでタグ付けできるようになります(Instagramヘルプ「ビジネス情報の編集」)
  • コラボ投稿:1つの投稿に最大5人の共同投稿者を追加でき、招待を承認したアカウントのフォロワーにも投稿がシェアされます。タグ付けやメンションではシェアされない点が違いです(Instagramヘルプ「コラボ投稿」)。観光協会・宿・体験施設の共同投稿に向きます。使い方はコラボ投稿の使い方を参照してください

来訪者の投稿(UGC)を地域の発信に生かす

  • 再投稿は許可を得てから行います。文化庁は、ネットで見つけた画像は自由に使えるという認識は誤解で、権利者の意思に従うべきだと説明しています(文化庁「著作権、OK?NG?」)。手順はリポスト活用術を参考にしてください
  • 公園や街中の屋外に恒常的に設置されている彫刻・壁画などは、原則として撮影やSNS投稿が可能です。ただし複製物の販売目的の利用は認められず、施設管理権による撮影ルールがある場合もあります(文化庁「著作権、OK?NG?」)
  • 個人情報保護委員会のガイドラインは、顔画像も個人を識別する情報に含まれるとしています(個人情報保護委員会「通則編ガイドライン」)。祭りなど人の多い場所の写真は、顔が大きく写っていないか確認しましょう
  • 投稿募集の事例:JNTOは、中国向けの東北プロモーションで、東北6県の写真などを一般から募集するキャンペーンを行い、1,000件以上の投稿が集まったと紹介しています(JNTO「インフルエンサーとの情報発信」)。個別事例であり、同じ結果を保証するものではありません

インフルエンサー招待・ファムトリップの表示ルール

JNTOは、インドネシア向けに若手女優を東京・大阪・京都・金沢へ招請した事例や、在日中国人インフルエンサー6名を東北へ招請した事例を公式ページで紹介しています。(出典:JNTO「インフルエンサーとの情報発信」)地域で同様の招待を行うときは、表示のルールを押さえる必要があります。

  • ステマ規制:消費者庁の運用基準によると、SNSへの投稿を依頼して商品・サービスを無償で提供し、受け取った人が事業者の方針や内容に沿った表示をするなど、自主的な意思によるものとは認められない場合は事業者の表示になります。「広告」「PR」「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった表示は明瞭な例です(消費者庁「ステマ告示の運用基準」)。令和5年10月1日から景品表示法違反の対象です(消費者庁「ステマ規制」)
  • 同じ運用基準は、観光大使など、事業者の依頼を受けて表示を行うことが社会通念上明らかな人を通じた表示を、告示の対象とならない例に挙げています(消費者庁「ステマ告示の運用基準」)。ただし、そう見えるかどうかは個別に判断されます
  • Instagramのブランドコンテンツ:金銭の支払いや無料ギフトなどの対価を受けたコンテンツは、ブランドコンテンツツールを使った場合にのみ投稿できます。また「政府・自治体、選挙、政治」のビジネスパートナーは、事前にMetaから書面による認証を得る必要があるカテゴリに挙がっています(Instagramヘルプ「ブランドコンテンツ」)。自治体・観光協会が依頼側になる場合は、公式の最新条件を確認してください

依頼時には、表示文言・事実の確認方法・誤りがあったときの訂正手順を書面で決めておくと安心です(運用上の例)。

混雑・マナーも発信に含める

観光庁は、一部の地域・時間帯における観光客の過度な集中やマナー違反が顕在化しているとして、令和8年度の予算事業で面的な受入環境整備を支援すると説明しています。(出典:観光庁「観光地のインバウンド対応の支援」)観光庁の令和7年度アンケート(訪日外国人4,110人、空港での対面調査)では、旅行中に困ったことの上位に「観光地や地域の混雑」などが並び、混雑で困った割合は、都市部のみや都市部と地方部の両方を訪れた人のほうが、地方部のみを訪れた人より高い傾向でした。(出典:観光庁「令和7年度 受入環境整備アンケート」)映える場所の投稿には、混雑しやすい時間帯・駐車場・マナーも添えると、地域の評判を守りやすくなります(運用上の例)。

運用の組み立てと効果の見方

  • 目標と指標は観光地経営戦略に紐づけます。登録DMOには、KPIの達成状況や計画の実施状況を分析・評価し、関係者に共有して必要に応じて見直すPDCAの実績が求められています(観光庁「DMOの登録制度」)。SNSでも、フォロワー数だけでなく、公式サイトや予約ページへの遷移などを指標に置く考え方ができます(運用上の例)
  • ガイドラインは、旅行者の利便性向上や周遊促進のため、地域全体の観光情報の発信と、予約・決済機能などを一体的に提供するウェブサイトの構築が重要だとしています(観光庁「DMO登録制度ガイドライン」)。SNSの投稿は、その入口として設計します
  • Googleビジネスプロフィールでは、景勝地やイベント会場は営業時間を指定すべきでない業種の例に挙がっています。イベントの投稿では、開始・終了の日時を設定できます(Googleビジネスプロフィール「ガイドライン」、Googleビジネスプロフィール「投稿」)

地域観光のSNSでよくある失敗

失敗例起きること対処
事業者ごとに別々のタグを使う地域の投稿が検索で束ならない共通タグを1〜2個決めて全員に周知する(運用上の例)
再投稿の許可を取らない権利者とのトラブルDMなどで許可を取り、記録を残す
招待した人の投稿に表示がないステマと見なされるおそれ「PR」等の表示を依頼時に取り決める
混雑情報を書かない来訪者の不満・地域の苦情時間帯・マナー・代替の場所を添える

よくある質問(Q&A)

Q. 小さな自治体でも取り組めますか?
A. 取り組めます。まず共通タグと担当者を決め、事業者の投稿を観光協会のアカウントとコラボ投稿でつなぐ形から始められます。効果は指標を決めて確かめてください。

Q. ファムトリップの参加者に投稿内容を指定してよいですか?
A. 内容を指定すると、自主的な意思による投稿とは認められず、事業者の表示になる可能性があります。その場合は「PR」などの表示が必要です。個別の判断は消費者庁の窓口へ。(出典:消費者庁「ステマ告示の運用基準」)

Q. 海外向けの発信はどう始めればよいですか?
A. DMOのガイドラインは、JNTOの海外ネットワークとの連携を挙げています。まず地域の画像・動画の素材を整理し、JNTOなどへ相談する方法があります。(出典:観光庁「DMO登録制度ガイドライン」)

まとめ

地域観光のSNSプロモーションは、受入環境を整えたうえで、共通のタグ・位置情報・コラボ投稿で地域全体の発信をそろえ、来訪者の投稿は許可を得て生かし、招待による投稿は広告と分かる表示にする、という順番で組み立てます。

最初の一歩として、今月中に地域の事業者へ共通タグを案内し、混雑しやすい場所とマナーの情報を1本の投稿にまとめてみてください。

参考情報・出典