飲食店を探す人は、地図アプリのクチコミや、お客様が投稿した料理の写真を見て「ここなら大丈夫そう」と判断することがあります。お客様自身の言葉や写真(UGC=ユーザー生成コンテンツ)は、お店の広告とは違う「第三者の声」として受け取られやすいのが特徴です。
ただし、口コミやUGCは「お願いの仕方」にルールがあります。「口コミを書いたらドリンク1杯サービス」という案内は、Googleマップでは禁止、法律上は問題になりにくい場面もある、というように、置き場所ごとに結論が変わります。この記事では、公式ページで確認できた範囲で、口コミの依頼、ステマ規制、リポストの権利、返信の書き方を整理します。
この記事の3行まとめ
① 口コミ・UGCは「置き場所」で分ける。Googleやグルメサイトは各社のガイドライン、SNS投稿と「お客様の声」は景品表示法(ステマ規制)が主なルール
② 口コミの見返りは、Googleでは割引・無料サービスも禁止。「法律上は問題になりにくい」と「媒体で認められる」は別の話
③ リポストは投稿者の許可を取る。返信は審査を経て公開される前提で短く丁寧に。悪い口コミの報告は「ポリシー違反かどうか」で決まる
口コミを「お願いする」ときのルール
Googleのヘルプでは、Googleマップへの投稿は実体験に基づく必要があるとされ、お店側が次の行為をすることが禁止されています。(出典:Google「禁止または制限されているコンテンツ」)
- クチコミの投稿、または否定的なクチコミの修正・削除と引き換えに、割引や無料の商品・サービスなどのインセンティブを提供する
- 否定的なクチコミを妨げる、肯定的なクチコミだけを募る
- その場での記入を要求・強要する、特定の内容を含めるよう依頼する
- 一定数のクチコミを集めるようスタッフに要求する
インセンティブや内容への働きかけなしに、実体験の投稿を促すことは許可されています。方法として、投稿用のリンクやQRコードを、領収書、感謝メール、店内の掲示に使う例が示されています。(出典:Google「リンクまたは QR コードを作成してクチコミをリクエストする」)違反があると、クチコミの削除に加え、一定期間新しいクチコミを受け取れなくなる、既存のクチコミが非公開になる、警告がプロフィールに表示される、といった制限が課されることがあります。(出典:Google「ポリシー違反によるビジネス プロフィールの制限」)
食べログの口コミガイドラインも、金品などを受けることを目的とした口コミやお店のPR目的の口コミを禁止しており、NG例に「口コミを投稿したら30%割引のクーポンをもらえる」キャンペーンへの参加が挙がっています。店舗関係者が関係店舗に口コミを投稿することも禁止です。(出典:食べログ「口コミガイドライン」)
文面は、見返りを結びつけず、感想も指定しない形にします(運用上の例)。避けたい例は「★5で書いたら次回1杯無料」、無難な例は「率直なご感想を、こちらのQRコードからお寄せください」です。
ステマ規制と媒体ルールは、線引きが違う
消費者庁は、令和5年10月1日からステマが景品表示法違反になったと案内しています。SNS投稿やレビュー投稿も対象で、規制の対象は広告主(事業者)です。(出典:消費者庁「ステルスマーケティング」)Q&Aは、事業者が表示内容の決定に関与しているかを軸に整理しています。(出典:消費者庁「ステマQ&A」)
| ケース | Q&Aの考え方 |
|---|---|
| 口コミ投稿を条件に割引(内容は指定しない) | 通常は「事業者の表示」に当たらず、告示違反にならないと考えられる(Q6) |
| 「星5」や推奨コメントを条件にする | 事業者が内容を決めているため「事業者の表示」に当たる(Q6) |
| ハッシュタグ付き投稿から抽選 | 内容の指示がなければ通常は当たらない。「#毎日食べたい美味しさ!」など具体的な感想のタグが条件なら当たる(Q8) |
つまり、割引つきの依頼はステマ規制上は問題になりにくいとされても、Googleや食べログでは禁止です。法律と媒体ルールは別々に確認します。「事業者の表示」に当たる投稿では、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」や「A社から提供を受けて投稿」といった明瞭な記載が必要で、リプライへの記載や動画の冒頭だけの表示では気づかれないおそれがあるとされています。(出典:消費者庁「ステマQ&A」)
SNS投稿キャンペーンの設計|感想は指定しない
- 投稿してほしい場面を決める(例:料理が届いた直後の1枚)
- お願いするのは店名タグや位置情報などの形式にとどめ、「おいしいと書いて」など感想の文言は指定しない
- ハッシュタグは絞る。Instagramのヘルプには、1つの投稿に使えるタグは最大5個と記載があり、お店が案内するのは店名タグ1つ程度が一案(運用上の例)。景品を付けるなら上限を確認する
- 応募規約に、お店のSNSや店頭での紹介の可否を書く
(出典:Instagramヘルプ「ハッシュタグを使用する」、消費者庁「景品規制の概要」)。インフルエンサーに依頼した投稿を「お客様の声」として載せるのは適当でないとQ16に書かれています。(出典:消費者庁「ステマQ&A」)設計の全体はユーザー参加型キャンペーン設計、景品は飲食店のTikTok活用事例も参照してください。
リポスト・写真の権利|許可を取る流れを決める
著作権法では、著作者は創作した時点で権利を享有し、方式の履行は要しません(第17条第2項)。複製する権利(第21条)や公衆送信を行う権利(第23条)は著作者が専有します。(出典:e-Gov法令検索「著作権法」)SNSの写真が著作物に当たる場合、他人の写真をお店のアカウントや店頭で使うには原則として許可が必要です。個別の判断は専門家へ。
Instagramのヘルプも、クレジットを付けた場合や、利益を得る意図がなかった場合でも著作権侵害になり得ると説明し、投稿前に著作者から書面で許可を得ることを一般的に推奨しています。(出典:Instagramヘルプ「著作権法に違反していないことを確かめる方法」)ストーリーズでの再シェア機能は、相手が公開アカウントで再シェアを許可している場合のみ使えますが、これは機能面の条件です。(出典:Instagramヘルプ「他の人の投稿をストーリーズにシェアする」)
実務では、DMで使い方(媒体、期間、クレジット表記、加工の有無)を伝えて同意をもらい、画面を保存し、許可が取れなければ使わない、という流れにします(運用上の例)。人が写る写真は、写っている人への配慮も必要です。Googleのポリシーでは、同意なく投稿された顔写真などは個人情報として扱われます。(出典:Google「禁止または制限されているコンテンツ」)
口コミへの返信と、悪い口コミへの向き合い方
Googleでは、返信にオーナー確認が必要です。返信はGoogleの審査を経て公開され、審査は通常10分以内、最長で30日ほどかかる場合があります。企業からの返信として表示され、個人名は出ません。(出典:Google「ユーザーからのクチコミを管理する」)公式のヒントは、丁寧に簡潔に、必要に応じて返信することを勧めており、すべてのクチコミに感謝を公開する必要はないとしています。書いた人はすでに顧客なので、お得な情報の提示は不要で、新着情報などを伝えるとよいとされています。
否定的なクチコミには、個人情報の公開や個人攻撃を避け、誠実に対応し、必要に応じて謝罪し、速やかに返信するよう勧められています。解決のためメールや電話での直接連絡を依頼することもヒントに挙がっています。(出典:Google「クチコミを増やすためのヒント」)型は「お礼またはお詫び、事実の確認、今後の対応、問い合わせ先」が目安です(運用上の例)。
削除を求められるのは、Googleのポリシーに違反しているクチコミのみで、不満があるだけでは報告しないよう求められています。報告の評価には通常数日かかり、不服なら1回限りの再審査請求ができます。(出典:Google「不適切なクチコミを報告する」)削除と引き換えに金銭などを要求された場合は、支払わず、証拠を集めて報告フォームから報告するよう案内されています。(出典:Google「否定的なクチコミによる恐喝詐欺を報告する」)
「お客様の声」を店頭やサイトに載せるとき
消費者庁のQ&A(Q10)は、第三者の表示を恣意的に抽出せず、変更せずにそのまま引用するなら「事業者の表示」に当たらないとしています。無作為に選んだ回答は当たらず、好意的な評価だけ、「良い点」だけを選ぶと当たると考えられ、その旨が明瞭でなければ違反です。(出典:消費者庁「ステマQ&A」)実在のお客様から許可をもらい、内容を書き換えず、選び方を決めて載せるのが基本です(運用上の例)。
よくある失敗と対処
| 失敗例 | 対処 |
|---|---|
| 「書いたらサービス」と案内して、口コミの削除やプロフィールの制限につながる | 見返りを結びつけず、QRコードで依頼する |
| スタッフに「月○件集めて」と指示する(Googleのポリシーで禁止) | 自然な範囲でのお願いにとどめる |
| 許可なくお客様の写真を店頭ポップに使う | 使い方を伝え、同意を記録してから使う |
| 好意的な声だけを「お客様の声」にする | 無作為に選ぶか、選んだものと分かる形で載せる |
よくある質問(Q&A)
Q. 消費者庁のQ&Aでは割引つきの口コミ依頼が問題になりにくいのに、なぜGoogleでは禁止ですか?
A. 消費者庁のQ&Aは「ステマ規制に違反するか」を整理したもので、Googleのポリシーは口コミの信頼性を守る別のルールです。目的が違うため結論が異なります。実際に使う媒体のルールを優先します。(出典:消費者庁「ステマQ&A」、Google「禁止または制限されているコンテンツ」)
Q. 事実と違う悪い口コミは削除できますか?
A. 削除の対象はGoogleのポリシーに違反するクチコミだけです。実体験に基づかない内容は虚偽のエンゲージメントに当たる場合がありますが、事実と違うと感じるだけでは判断できません。違反の可能性があれば報告し、そうでなければ事実を丁寧に伝える返信を検討してください。(出典:Google「不適切なクチコミを報告する」、Google「禁止または制限されているコンテンツ」)
Q. お客様のInstagram投稿をスクリーンショットして、店内ポスターに使ってよいですか?
A. 投稿者の許可を得るのが基本です。使う場所と期間、クレジットを伝え、同意を記録に残してください。(出典:Instagramヘルプ「著作権法に違反していないことを確かめる方法」)
まとめ
口コミ・UGC施策は、置き場所ごとのルール確認から始まります。見返りを結びつけない依頼、感想を指定しないキャンペーン、許可を取るリポスト、丁寧な返信を組み合わせることが、長く信頼されるための土台です。まずは店内のQRコードやポップの文面に「サービス」「割引」「★5」が入っていないか見直してみましょう。最新の規約は公式ページで確認してください。Google側の整え方はGoogleビジネス×SNSの連動、全体像は飲食店SNS集客完全ガイドで解説しています。
参考情報・出典
- Google「禁止または制限されているコンテンツ」
- Google「クチコミを増やすためのヒント」
- Google「リンクまたは QR コードを作成してクチコミをリクエストする」
- Google「ユーザーからのクチコミを管理する」
- Google「不適切なクチコミを報告する」
- Google「ポリシー違反によるビジネス プロフィールの制限」
- Google「否定的なクチコミによる恐喝詐欺を報告する」
- 食べログ「口コミガイドライン」
- 消費者庁「ステルスマーケティング」
- 消費者庁「ステマQ&A」
- 消費者庁「景品規制の概要」
- Instagramヘルプ「他の人の投稿をストーリーズにシェアする」
- Instagramヘルプ「著作権法に違反していないことを確かめる方法」
- Instagramヘルプ「ハッシュタグを使用する」
- e-Gov法令検索「著作権法」

