不動産会社のSNS集客

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不動産の売買は金額が大きく、検討にも時間がかかります。そのため、物件情報だけでなく、地域の暮らしや手続きの知識、担当者の人柄を発信して「この会社に相談したい」と思ってもらう活用が向いています。ただし、売買物件を紹介した投稿は、ポータルサイトやホームページと同じ不動産広告として扱われます。

この記事では、売買を中心に扱う不動産会社が、SNS投稿で押さえるべき必要な表示事項、おとり広告・成約済み物件の扱い、担当者個人の発信、問い合わせ導線と個人情報の注意を整理します。ルールは、公正競争規約の本文、協議会の調査資料、宅建業法の条文など、原文を確認できたものに絞っています。賃貸の物件紹介は賃貸仲介のInstagram活用で扱います。

この記事の3行まとめ

① 物件を紹介するSNS投稿は不動産広告。会社名・免許証番号・取引態様・価格などの必要表示事項を、投稿に載せる
② 成約済みの物件は削除か更新を。更新の間隔と担当者を決めて、おとり広告を防ぐ
③ 地域情報や知識、担当者の発信で信頼を育て、問い合わせ導線には個人情報の利用目的を添える

不動産会社のSNS集客:まず「SNS投稿も不動産広告」と知る

首都圏不動産公正取引協議会は2026年3月19日、Instagramの不動産広告の実態調査を公表しました。「賃貸」「不動産」「新築建売」など6つのキーワードで検索した上位の広告から、募集中の物件436件を対象にしています。必要な表示事項を漏れなく表示していた物件は1件もなく、取引態様の不表示は377件(86.5%)、宅建業法の免許証番号の不表示は388件(89.0%)、事務所の所在地の不表示は264件(60.6%)でした。売買物件は153件のうち68件(44.4%)が価格を表示していませんでした。(出典:首都圏不動産公正取引協議会「SNS不動産広告の実態調査」)検索上位の広告が対象で、全投稿の傾向ではありません。

同協議会は、ポータルサイトもSNSもインターネットを介した不動産広告でルールは同じであり、DMへの誘導を優先して物件概要を表示しないことはあってはならないとしています。(出典:同)九州の協議会も、SNSでの物件紹介は不動産広告に該当すると周知しています。(出典:九州不動産公正取引協議会「SNS投稿の周知チラシ」)

法令面では、宅地建物取引業法第32条が、代金などについて著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利だと誤認させる表示を禁じています。第33条は、工事完了前の物件は必要な許可や確認の後でなければ広告できないとし、第34条は、広告で取引態様(自ら契約の当事者・代理・媒介の別)を明示するよう定めています。(出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」)

必要な表示事項:売買の投稿で漏らさないもの

不動産の表示に関する公正競争規約第8条は、物件の表示をするときは、物件の種別ごとに、広告主、物件の内容、価格などの取引条件、交通などの利便・環境に関する事項を、見やすい場所に、見やすい大きさ・色彩の文字で、分かりやすく明瞭に表示するよう求めています。必要な事項は物件の種別ごとの別表で決まっています。(出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の公正競争規約」)戸建て1戸の売買(別表5)でインターネット広告に○が付いている事項を、投稿に落とし込むと次のようになります。

区分別表5で必要とされる事項の例SNSでの載せ方(運用上の例)
広告主名称または商号、事務所の所在地、電話番号、免許証番号、所属団体名と公正取引協議会加盟事業者である旨画像下部に固定の帯を入れるか、キャプション末尾に定型文を置く
取引条件取引態様(売主・代理・媒介の別)、価格価格は画像内かキャプションの冒頭に書く
物件の内容所在地(町または字まで)、土地面積・建物面積、建築年月、引渡し可能年月、許可等の処分番号(工事完了前)カルーセルの1枚目に物件概要の表を置く
交通・情報の鮮度交通の利便、情報公開日(または直前の更新日)と次回の更新予定日最寄駅までの徒歩分数と、掲載日・更新予定日を併記する

徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間として算出し、1分未満の端数は1分とすることが同規約の施行規則に定められています。(出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の公正競争規約」)動画も、概要を示さずに紹介だけを流すことはできません。

おとり広告と成約済み物件の扱い

規約第21条は、物件が存在しないため取引できない物件、存在しても実際には取引の対象とならない物件、取引する意思がない物件に関する表示を禁じています。連合会のガイドラインは、成約済みの物件を広告に出す場合や、物件の難点をことさら指摘して他の物件を勧める場合を例示しています。(出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の公正競争規約」)消費者庁の運用基準も同様の例を示しています。(出典:消費者庁「不動産のおとり広告」運用基準)

対策の例は、投稿に掲載日を入れる、成約したらその日のうちに削除かキャプション更新を行う、固定投稿・ハイライト・リールに古い物件を残さない、です(運用上の例)。ストーリーズは、ハイライトに追加しない限り24時間後に消えます。(出典:Instagramヘルプ「ストーリーズの表示期間」)

写真・動画・特定の言葉の注意

担当者個人の発信とチームの運用ルール

首都圏不動産公正取引協議会は、SNSの広告は事業者単位のほか、従業員等が個人の判断で行っていると思われるものも多いと指摘しています。(出典:首都圏不動産公正取引協議会「SNS不動産広告の実態調査」)担当者のアカウントでの扱いは個別の確認が必要ですが、社内で投稿前の確認者・チェック表・成約時の削除担当を決めておくと安心です(運用上の例)。社内ルールの作り方はSNS運用ガイドライン作成テンプレが参考になります。

Googleビジネスプロフィールでは、不動産仲介士は「個人専門家」に含まれます。個人専門家のプロフィールは、専門業務を行う本人で、オーナー確認された事業所で営業時間内に本人に連絡が取れる場合などに作成でき、1人が分野ごとに複数作ることはできません。(出典:Googleビジネスプロフィール「ガイドライン」)

地域情報・知識・人柄の発信ネタ

ネタ投稿の例注意点
地域情報駅周辺の暮らし、学区、買い物距離や時間は規約の算出方法で示す。周辺環境は実際より優良と誤認させない
購入の知識購入の流れ、諸費用の考え方制度は所管官庁の原文で確認し、出典を添える
担当者・会社担当者の紹介、取り組み免許番号や所属団体は常に表示する
お客様の声購入後の感想同意を得て、個人が特定できる情報は載せない
物件の紹介新着、内見の様子必要表示事項と更新日を載せる。成約後は削除

問い合わせ導線と個人情報の扱い

  • Instagramのプロフィールには、ウェブサイトを5つまで追加できます(Instagramヘルプ「ウェブサイトの追加」)。「物件一覧」「来店予約」「売却査定」などに分けられます(運用上の例)
  • アクションボタンは1つのみ表示でき、連絡先を集めるリード獲得フォームを追加できます。利用できるパートナーは限られます(Instagramヘルプ「アクションボタン」)
  • 個人情報保護委員会のガイドラインによると、申込書やアンケート、キャンペーンの入力画面などで本人から直接個人情報を取得する場合は、あらかじめ利用目的を明示します。「事業活動に用いるため」のような抽象的な特定は、不十分な事例とされています。ネットワーク上では、送信ボタンを押す前に利用目的が目に留まる配置が望ましいとされています(個人情報保護委員会「通則編ガイドライン」)

不動産会社のSNS集客でよくある失敗

失敗例起きること対処
物件紹介に会社情報・取引態様がない必要表示事項の不足定型の帯やキャプション末尾の定型文を使う
成約済みの投稿が残るおとり広告と見なされるおそれ成約時の削除担当を決め、更新期間を最長2週間以内にする
「DMで価格をお伝えします」価格などの重要事項が表示されない価格・面積などは投稿で表示し、DMは詳細確認に使う

よくある質問(Q&A)

Q. 成約済みの物件はどう扱えばよいですか?
A. 連合会のガイドラインは、成約済みの物件を広告し続けることをおとり広告の例に挙げています。成約と分かったらすみやかに削除します。更新期間は最長でも2週間とされています。(出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の公正競争規約」)

Q. 担当者個人のSNSで物件を紹介してもよいですか?
A. 物件紹介は不動産広告に当たり、必要表示事項などの規約の対象です。個人の判断による投稿が多いことは協議会の調査でも指摘されています。会社として確認の仕組みを持ち、判断に迷う場合は所属する公正取引協議会へ。(出典:首都圏不動産公正取引協議会「SNS不動産広告の実態調査」)

まとめ

不動産会社のSNS集客は、地域・知識・人柄で信頼を育てながら、物件を紹介する投稿では不動産広告のルールを守ることが基本です。会社情報と取引態様、価格・面積などの物件概要、掲載日と更新予定日を載せ、成約したら削除する運用を作りましょう。

最初の一歩として、過去1か月の物件投稿を見返し、免許証番号・取引態様・価格が載っているか、成約済みのものが残っていないかを確認してみてください。個別の判断は所属の公正取引協議会へ。

参考情報・出典