士業のYouTube連動戦略

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士業にとってYouTubeは、手続や制度を、顔と声で順を追って説明できる場所です。調べものの途中で動画を見つけた人が、「この先生なら任せられそうだ」と感じる入口になり得ます。X、ブログ、LINEなどと組み合わせれば、短い投稿で気づいてもらい、動画で詳しく伝え、フォームで相談を受ける流れも作れます。

ただし、動画で話した言葉も、概要欄の文章も、広告として見られる前提で考える必要があります。この記事では、弁護士・税理士・社労士の広告に関するルールを原文で確認できた範囲で整理し、YouTubeヘルプで確認できた機能を使った設定、他のSNSとの連動、守秘義務、運用体制を説明します。

ご注意:この記事は、各団体の規則とYouTubeヘルプの要点を整理したものです。投稿の可否は、所属する弁護士会・税理士会・社会保険労務士会の規則と運用で最終確認してください。司法書士・行政書士など、ここで扱わない士業も、所属の会の規則を確認してください。

この記事の3行まとめ

① 動画も広告として扱われる。弁護士は動画の事前打ち合わせが望ましいとされ、税理士は電磁的方法も細則の対象、社労士は会則で誇大・虚偽の広告・宣伝が禁止されている
② YouTubeには、チャプター、字幕、コメント保留、チャンネル権限など、公開前後の事故を減らせる機能がある
③ 依頼者情報、個別相談、資格の名称に注意し、公開前の確認と記録保存の流れを決める

士業の動画が「広告」として扱われる理由

次の表は、動画の発信に関係する規則を、原文で確認できた範囲でまとめたものです。

士業根拠動画で押さえる点
弁護士日弁連「業務広告に関する指針」第3の17動画配信による広告は、表現を事前に制作者・出演者と打ち合わせ、規程に反しないようにすることが望ましいとされる(詳細は弁護士の記事)
税理士名古屋税理士会の細則第2条・第7条・第9条と日税連の運用指針広告は「電磁的方法その他の方法」による情報開示を含む。広告には氏名と会員である旨を表示し、広告物と記録を広告終了から3年間保存する
社労士全国社会保険労務士会連合会会則第43条の4誇大もしくは虚偽の事項により相手をだますおそれがある広告・宣伝の禁止。承諾のない電子メール広告の禁止

(出典:日本弁護士連合会「業務広告に関する指針」、名古屋税理士会 綱紀監察部「綱紀のしおり〈四訂版〉」(令和6年3月)、全国社会保険労務士会連合会会則(令和6年11月29日施行)。弁護士の詳細は弁護士の発信ガイドライン、税理士は税理士のSNS集客術、社労士は社労士のSNS運用で扱っています)

税理士の運用指針は、業務拡大が目的でなくても、自分や自分の業務の情報開示であれば広告にあたるとしています(細則第2条)。解説動画だから広告ではない、とは言えません。(出典:名古屋税理士会 綱紀監察部「綱紀のしおり〈四訂版〉」(令和6年3月))

YouTube側の設定を整える

YouTubeヘルプで確認できた機能のうち、士業の運用に役立つものを整理します。

項目ヘルプで確認できた内容士業での使い方の例
タイトルと説明タイトルは最大100文字、説明は最大5,000文字説明に事務所名、資格、所属会、制度の施行日と出典、相談窓口を書く
チャプター説明にタイムスタンプを書く。最初は00:00、3つ以上を昇順、各10秒以上手続の段階ごとに区切る
字幕YouTube Studioで追加できる専門用語や条文名を字幕で確認できるようにする
視聴者の設定動画が子ども向けかどうかを申告する義務がある(児童オンラインプライバシー保護法)アップロード時に、内容に合わせて選ぶ
コメント不適切な可能性があるコメントやすべてのコメントを保留できる。ブロックする単語と、リンクを含むコメントの保留も設定できる個人情報の書き込みや勧誘コメントを、公開前に確認する
外部リンクコミュニティガイドラインに違反するコンテンツへの誘導リンクは不可。口頭や文字での誘導も対象相談フォームなど、安全なリンク先だけを載せる

(出典:YouTubeヘルプ「YouTube 動画をアップロードする」、YouTubeヘルプ「動画のチャプター」、YouTubeヘルプ「字幕を追加する」、YouTubeヘルプ「コメント設定について」、YouTubeヘルプ「外部リンクに関するポリシー」。「使い方の例」は本記事の運用上の例です)

また、YouTubeのスパムに関するポリシーは、欺くようなタイトル、サムネイル、説明で、内容と異なる動画をクリックさせる行為を禁止しています。「必ず解決」のような誇大なタイトルは、士業の広告規則だけでなく、プラットフォームのポリシーの面でも避けるべき表現です。(出典:YouTubeヘルプ「スパムに関するポリシー」)

動画の企画と概要欄の書き方

動画の種類企画のポイント注意すること
手続・制度の解説調べている人の疑問から題を決める施行日と根拠を概要欄に書き、個別の結論を断定しない
よくある質問への回答質問を一般化して答える個別相談の回答にならないようにする。依頼者が特定できる話は使わない
法改正・制度変更の解説公布日と施行日を分けて話す公的機関の資料へのリンクを添える。古くなったら説明を更新する
事務所・自己紹介方針と対応する業務を説明する氏名と所属会、資格の名称を正確に表示する。実績の数字は根拠を残す

概要欄は、動画の最後に付け足すものではなく、広告の一部です。次の項目をテンプレートにしておくと、確認が簡単になります。

  1. 動画の要約と、取り扱う制度の名称・施行日
  2. 出典(条文、官公庁の資料)へのリンク
  3. 氏名、事務所名、資格、所属会
  4. 相談窓口(フォーム・電話)と、無料の範囲を示す場合はその条件
  5. 「一般的な解説であり、個別の事案には当てはまらない場合がある」旨

X・ブログ・YouTubeの連動設計

同じテーマを複数の媒体に出すときは、役割を分けると無理がありません。

  • X:要点を短く伝える。YouTubeやブログへの案内を添える
  • YouTube:手続や制度の流れを、順を追って説明する
  • ブログ(自サイト):条文や出典、最新の更新日を文章で示す
  • フォーム・LINE:相談の受付。個人情報の入力はここで行う

YouTubeでは、動画の長さが3分以下で、アスペクト比が正方形または縦長の場合、ショート動画としてアップロードされます。長い解説動画の要点を縦型に切り出して、導入に使うこともできます。(出典:YouTubeヘルプ「YouTube 動画をアップロードする」)切り出すときも、元の動画と同じ確認を通し、文脈が変わって誤解を招かないかを見ます。

制度改正があったときは、すべての媒体で同じ日に訂正し、各媒体の更新日を揃えます。士業全体の考え方は士業のSNS活用完全ガイドも参考にしてください。

守秘義務・撮影・出演の注意

動画は、話した内容だけでなく、映り込んだ画面や書類も情報になります。税理士法第38条と第54条、社労士法第21条と第27条の2は、業務で知り得た秘密を漏らすことを禁じ、使用人等にも同じ義務を課しています。(出典:税理士法(e-Gov法令検索)、社会保険労務士法(e-Gov法令検索))

  • 画面共有やホワイトボードに、依頼者名、金額、書類の一部が映っていないかを確認する
  • 事務所で撮影するときは、書類、来客、電話の声が入らないようにする
  • 事例は一般化して話す。依頼者名や事案を出す場合は、規則に従って書面の同意を得る(税理士は細則第4条、弁護士は指針第4)
  • スタッフが出演する場合、税理士や社労士でない人が、その資格を名乗っているように見えないようにする(税理士法第53条、社労士法第26条)

運用体制と記録の保存

動画は、公開後に直すと、公開前の状態が残らないことがあります。次の流れで運用すると、確認と記録がそろいます。

  1. 台本:断定表現、依頼者情報、資格の名称、制度の日付を台本の段階で確認する
  2. 公開前の確認:公開設定を「限定公開」にして、リンクを知る人だけが視聴できる状態で最終確認する。限定公開のリンクは他の人に共有でき、原則としてチャンネルの動画一覧や検索結果には表示されない(YouTubeヘルプ「動画のプライバシー設定を変更する」)
  3. 公開:公開設定を変更する。公開した日時を記録する
  4. 保存:動画、概要欄、公開日時を保存する。税理士は広告終了から3年間(細則第9条)。弁護士の指針は、容量の大きい動画データを、ハードディスクやクラウドストレージなどに記録する方法を挙げている(第8)
  5. 更新:制度改正に合わせて概要欄や固定コメントを更新し、更新前の内容も記録する

チャンネルの運用を複数人で行う場合は、チャンネルの権限機能を使い、パスワードを共有しません。YouTubeヘルプによれば、この機能で複数のユーザーに異なるレベルの権限を付与でき、編集者はコンテンツのアップロードと公開ができ、閲覧者は情報の閲覧のみとなります。公開できる人を士業本人など少数に絞ると、確認のないまま公開される事故を防げます。(出典:YouTubeヘルプ「チャンネルの権限機能を使用して YouTube チャンネルへのアクセス権を追加または削除する」)

よくある失敗

  • 「必ず」「最短」などの誇大なタイトルとサムネイルを付ける
  • 概要欄に、制度の施行日や出典を書かない
  • 解説動画の最後だけで、「○○のご相談は当事務所へ」と書き、条件を説明しない
  • 依頼者情報が映り込んだまま公開する
  • 制度改正後も、古い動画を更新せずに残す

よくある質問(Q&A)

Q. 動画を公開する前に、確認用に限定公開で共有してもよいですか?
A. YouTubeヘルプによれば、限定公開の動画は、リンクを知っているユーザーが視聴でき、さらに他の人へ共有もできます。確認用に使うのは構いませんが、依頼者情報を含む素材は、確認の段階でもアップロードしないでください。

Q. コメント欄で寄せられた個別の相談に答えてもよいですか?
A. コメント機能は、保留やブロックする単語で管理できます。個別の相談は、記録や守秘の観点から、公開の場ではなく面談・電話・フォームで受けるのが安全です。税理士には、税務相談の内容とてん末を帳簿に記載する義務があります(税理士法第41条)。

Q. 弁護士・税理士・社労士以外の士業はどうすればよいですか?
A. 今回、原文で確認できたのは弁護士、税理士、社労士の規則の一部です。司法書士、行政書士などは、所属の会の規則や案内で、広告や勧誘の決まりを確認してください。

まとめ

士業のYouTubeは、手続や制度を順を追って説明し、信頼を積み上げる場です。動画も概要欄も広告として見られる前提で、断定表現、依頼者情報、資格の名称を公開前に確認してください。YouTubeのチャプター、字幕、コメント設定、チャンネル権限を使い、X・ブログ・フォームと連動させれば、運用の事故を減らしながら続けられます。公開後の記録の保存まで含めて、運用の流れを決めておきましょう。

参考情報・出典