インバウンド向けSNS運用

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外国人旅行者向けの発信は、日本語の投稿を訳しただけでは届きにくい分野です。国・地域によって使われるSNSも、旅行前に情報を集める方法も違うためです。一方で、「どの国ではこのSNS」といった話は、根拠が示されないまま語られがちです。

この記事では、観光庁とJNTO(日本政府観光局)の公式資料で原文を確認できた数字と、JNTO自身が運用しているチャンネルの一覧をもとに、多言語対応、決済・Wi-Fiなど旅行中の情報発信、免税制度の変更への対応を整理します。各SNSの利用者数ランキングは公式資料で確認できなかったため載せていません。

この記事の3行まとめ

① 観光庁の調査で、旅行前に役に立った情報源として「SNS」を挙げた訪日外国人は43.3%。宿泊施設ホームページ(11.1%)より回答率が高い
② 多言語対応は「全投稿を訳す」より、予約・アクセス・支払い・Wi-Fiなど旅行中に困りやすい情報を優先する
③ 免税は2026年11月1日購入分からリファンド方式に変わる。古い案内を残さない

インバウンド向けSNS運用:公式データで確認できること

JNTOの発表によると、2025年の訪日外客数は推計値で42,683,600人でした。(出典:JNTO「訪日外客数(2025年12月推計値)」)観光庁の調査では、旅行出発前に役に立った情報源(複数回答、全国籍・地域)として、「SNS」が43.3%、「動画サイト」が39.6%、「個人のブログ」が23.9%でした。「宿泊施設ホームページ」は11.1%、「宿泊予約サイト」は10.5%、「日本政府観光局ホームページ」は12.2%、「地方観光協会ホームページ」は4.9%です。(出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」)

同じ報告書では、日本滞在中に役に立った旅行情報は「交通手段」が65.9%で最も多く、「飲食店」56.0%、「観光施設」39.1%、「宿泊施設」38.0%、「買物場所」33.8%、「無料Wi-Fi」15.3%が続きます。旅行前の「見つけてもらう発信」だけでなく、旅行中に確かめられる情報の整備も重要だと読み取れます。

国・地域別では次のとおりです。調査票の「SNS」は、国別の表でFacebook・X(Twitter)・微信(WeChat)等と例示されており、Instagramなど個別のSNSの割合は報告書から読み取れません。

国・地域2025年訪日外客数(推計)出発前に役立った情報源として「SNS」を選んだ割合JNTOが運用する主なチャンネル
韓国9,459,600人47.1%Facebook・Instagram・YouTube・NAVERポスト
中国9,096,300人49.4%微博・WeChat・小紅書
台湾6,763,400人42.7%Facebook・Instagram・YouTube
米国3,306,800人35.4%Facebook・Instagram・YouTube・X
香港2,517,300人40.8%Facebook・Instagram・YouTube

外客数はJNTO「2025年12月推計値」資料(国・地域別)、SNSの割合は観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」、チャンネルはJNTO「ウェブサイトやSNSでの情報提供」で確認しました。チャンネルの列はJNTOが運用しているものの一覧であり、現地の利用者数の順位ではありません。中国市場の微博・WeChat・小紅書は、同ページに掲載されています。

多言語対応の進め方

  • JNTOは15言語のウェブサイトを運営し、市場ごとに言語を分けています(JNTO「ウェブサイトやSNSでの情報提供」)。国の機関の体制であり、中小の事業者が同じ数の言語を持つ必要はありません。まず自施設の来訪者に多い国・地域を、予約データや問い合わせで確認しましょう(運用上の例)
  • YouTubeは、動画に字幕を追加でき、外国の方など、より多くの視聴者に楽しんでもらえると案内しています(YouTubeヘルプ「字幕を追加する」)。タイトルと説明の翻訳を追加すると、視聴者が自分の言語で動画を検索して見つけられるようになると説明されています(YouTubeヘルプ「タイトルと説明を翻訳する」)
  • Googleビジネスプロフィールでは、ビジネス名に「Kafiex / カフィエクス」のような2言語併記を使うことは、看板がそう表示されていても認められません。1つのビジネスにつき作成するプロフィールは1つが原則とされています(Googleビジネスプロフィール「ガイドライン」)。外国人向けに別名・別プロフィールを作らず、説明文や写真で補いましょう
  • Instagramは、プロフィールにウェブサイトを5つまで追加できます(Instagramヘルプ「ウェブサイトの追加」)。英語・繁体字・韓国語などの言語別ページがある場合は、プロフィールのリンクで案内する方法があります(運用上の例)。機械翻訳を使うときは、人名・地名・料金・営業時間を現地の言語に詳しい人に確認してもらいます(運用上の例)
  • ハッシュタグは1投稿に最大5個と案内されています(Instagramヘルプ「ハッシュタグ」)。言語ごとにタグを増やすより、地域タグ1個に言語別のタグを1〜2個足す程度に絞る方法があります(運用上の例)

決済・Wi-Fi・コミュニケーションの情報を先に出す

観光庁の令和7年度アンケート(5空港での対面調査、回収4,110件)では、旅行中に「困ったことはなかった」は43.7%で、困ったことの1位は「ごみ箱の少なさ」の17.2%でした。2位から5位は「施設等のスタッフとのコミュニケーション」「観光地や地域の混雑」「交通機関の利用」「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」で、「クレジット/デビットカードの利用」は10.7%で6位、「入国手続き」は10.3%で7位でした。カードの利用で困った割合は増加しています。(出典:観光庁「令和7年度 受入環境整備アンケート」)

同じ調査では、無料Wi-Fi・カード・多言語表示・スタッフとのコミュニケーション・公共交通のいずれも、8割以上の旅行者がいずれかの都市で「便利」と答えました。便利だった理由には、カードで「使用可否が明確だった」、Wi-Fiで「認証や利用登録が簡単であった」「Wi-Fi利用について案内が多言語で表示されていた」などの選択肢が挙がっています。(出典:同)これらを踏まえた、発信の例です。

情報発信の例(運用上の例)置き場所
支払い方法使える決済手段、現金のみか、最低利用額の有無プロフィール、固定投稿、店頭の掲示と同じ表現
Wi-Fi無料か、利用登録の要否、パスワードの案内場所ストーリーズのハイライト、店内表示
言葉の対応話せる言語、翻訳アプリやイラスト付きメニューの有無プロフィールの説明文
アクセス・営業最寄りの駅やバス停、営業時間、予約の要否Googleビジネスプロフィール、予約ページ

観光庁は、訪日外国人旅行者向けの無料Wi-Fiスポットについて、共通シンボルマーク(Japan.Free Wi-Fi)を創設して周知に取り組んでいます。(出典:観光庁「観光地のインバウンド対応の支援」)

免税制度のリファンド方式への変更を発信に反映する

観光庁の免税店向けサイトによると、2026年10月までの制度では免税店で税抜価格(免税)で購入できましたが、2026年11月1日購入分からは、免税店で税込価格(課税)で購入し、出国時に空港・海港の端末でパスポートを提示して税関確認を受けた後に消費税相当額が返金されます。税関確認は購入日から90日以内に受ける必要があります。免税対象は同一店舗での1日の購入額(税抜)が5,000円以上で、飲食料品や化粧品などの消耗品は、国内で消費すると税関確認(返金)を受けられません。旅行者向けリーフレットは日本語・英語・簡体字・繁体字・韓国語で公開されています。(出典:観光庁「免税 リファンド方式(旅行者向け)」)

免税店を営む事業者は、「免税で買えます」「税抜価格で購入」といった古い案内がSNSやGoogleビジネスプロフィールの投稿に残っていないか確認しましょう。手続きの詳細は、同サイトや税務署で確認してください。

インバウンド向けSNS運用でよくある失敗

失敗例起きること対処
日本語の投稿を機械翻訳しただけにする固有名詞や料金の誤りで混乱が起きる現地の言語に詳しい人が確認する(運用上の例)
ビジネス名を2言語併記にするGoogleのガイドライン違反になる名前は看板どおり1つにし、説明文で補う
旅行中に必要な情報がない支払い・Wi-Fi・アクセスで来訪者が困る決済・Wi-Fi・営業時間を固定して載せる
免税の古い案内が残る2026年11月以降の購入手続きと食い違う投稿・プロフィールを見直す

よくある質問(Q&A)

Q. 中国からの旅行者にはどのSNSを使えばよいですか?
A. 公式資料では、JNTOが中国市場向けに微博・WeChat・小紅書を運用していることが確認できます。ただし利用者数や効果は読めなかったため、各アプリの規約と費用、運用体制を確認して判断してください。(出典:JNTO「ウェブサイトやSNSでの情報提供」)

Q. 外国人向けのInstagramアカウントは別に作るべきですか?
A. JNTOは市場ごとにアカウントを分けて運用していますが、国の機関の体制です。中小の事業者は運用負担も考え、まず1つのアカウントで言語別ページへの案内を整える方法があります(運用上の例)。

Q. 訪日客向けの予約はどうつなげればよいですか?
A. 観光庁のDMOガイドラインは、予約・決済機能などを一体的に提供するウェブサイトの構築を重要としています。自社の予約ページを多言語化し、プロフィールから案内する形が基本です。(出典:観光庁「DMO登録制度ガイドライン」)

まとめ

インバウンド向けSNS運用は、「SNSを見て旅行を決める人が多い」という公式データを踏まえつつ、旅行中に困りやすい支払い・Wi-Fi・言葉・アクセスの情報を整え、制度変更の案内も更新していくことが基本です。

最初の一歩として、来訪者の多い国・地域を1つ選び、支払い方法とWi-Fiの案内を1本の固定投稿にまとめてみてください。ホテルはホテル・旅館のSNS集客、地域全体の発信は地域観光のSNSプロモーションも参照してください。

参考情報・出典