ホテル・旅館は、泊まる前に「どんな部屋で、何が食べられて、どこで予約するのが確実か」を比べてから決められやすい商品です。写真や動画で雰囲気を伝えられるSNSは見つけてもらう入口として相性がよい一方、投稿を見て気に入っても、予約までの道が分かりにくければ他の窓口に流れてしまいます。
この記事では、客室・食事・体験の見せ方、公式サイトの予約(直販)へつなぐ導線、Googleビジネスプロフィールの扱い、そして宿泊料金を載せるときの景品表示法と総額表示の注意を整理します。決まりや仕様は、消費者庁・財務省・Google・Instagramなどの公式ページで原文を確認できた範囲に絞っています。個別の判断は所管窓口や専門家へご確認ください。
この記事の3行まとめ
① Instagramは「世界観を見せる入口」、Googleビジネスプロフィールは「地図で探した人の確認の場」、公式サイトは「予約の出口」と役割を分ける
② 客室・料理の写真と説明は、実際に提供するものと一致させる。料金は総額(税込)で示し、「通常料金」との比較には根拠を持つ
③ 無償提供や特典と引き換えの投稿は、広告と分かるようにする
ホテル・旅館のSNS集客:媒体ごとの役割分担
表は運用上の考え方の例で、右端は公式ヘルプで確認できた仕様です。
| 媒体 | 役割(例) | 公式ヘルプで確認できたこと |
|---|---|---|
| 客室・食事・周辺体験の世界観を見せる入口 | プロフィールにウェブサイトを5つまで追加できる(Instagramヘルプ「ウェブサイトの追加」) | |
| Googleビジネスプロフィール | 地図検索で来た人が写真・クチコミ・公式サイトを確認する場 | ホテルなど屋内宿泊施設は営業時間を指定しない業種の例に挙がっている(Googleビジネスプロフィール「ガイドライン」) |
| 公式サイトの予約ページ | 料金・空室・規定を確認して予約する出口 | Googleの無料の予約リンクで、検索結果に予約サイトを料金とともに表示できる(Hotel Center「無料の予約リンク」) |
客室・食事・体験の見せ方と、守りたい表示
景品表示法は、内容を実際よりも著しく優良だと示す表示(優良誤認)を禁止しています。(出典:消費者庁「表示規制の概要」)写真・説明文・料理名・料金のどれも対象です。投稿ネタごとに整理します。
| 見せるもの | 投稿の例 | 守ること |
|---|---|---|
| 客室 | タイプ別の眺望・寝具・バスの写真や動画 | 販売する客室タイプの写真に、タイプ名・広さ・定員(運用上の例)を添える。別タイプの客室を使わない |
| 食事 | 夕食・朝食の内容、料理人のこだわり | ホテルやレストラン等のメニュー・料理等の表示はすべて景品表示法の対象。食材・産地・調理法は実際の提供内容と一致させる(消費者庁「メニュー・料理等の表示の考え方」) |
| 体験・周辺 | 朝の散策、送迎、地元の体験 | 有料・無料、予約の要否、実施日を明記(運用上の例) |
| 記念日・季節プラン | 記念日プラン、桜・紅葉・雪景色 | 内容・期間・条件を明記し、終了後の投稿は見直す(運用上の例) |
直販(公式サイト予約)へつなぐ導線の作り方
投稿から予約まで、押す場所を迷わせないことが基本です。確認できた仕組みは次のとおりです。
- Instagramのプロフィールには最大5つのウェブサイトを追加できます(Instagramヘルプ「ウェブサイトの追加」)。「公式予約ページ」「宿泊プラン一覧」「アクセス」などに絞ると迷いにくくなります(運用上の例)。作り方はリンク in bio の最適化も参照
- ビジネスアカウントのアクションボタンは、プロフィールに1つだけ表示できます。利用できるパートナーは限られ、使えない場合があります(Instagramヘルプ「アクションボタン」)
- Googleビジネスプロフィールの投稿は「最新情報」「特典」「イベント」の3種類があり、最新情報には予約などのボタンを付けられます。期間を設定していない投稿は6か月でアーカイブされます(Googleビジネスプロフィール「投稿」)
Googleの「無料の予約リンク」を知っておく
Hotel Centerのヘルプによると、無料の予約リンクは、ユーザーがGoogleのサービスでホテルを検索したときに、検索結果へ予約サイトを客室料金とともに表示する仕組みです。クリックされても費用はかからず、入札単価はランキングに影響しません。ランキングには、ランディングページでの操作や過去にGoogleへ提供した料金の精度などのシグナルが使われます。(出典:Hotel Center「無料の予約リンク」)予約システムを使っている施設は、すでにその提供会社を通じてGoogleと連携している可能性があるため、提供会社への確認が案内されています。(出典:Hotel Center「無料の予約リンク」、Hotel Center「予約リンクで旅行者とつながる」)
流入元を分けて見たいときは、動的なランディングページ変数で、広告のクリックか無料の予約リンクのクリックかを区別できると説明されています。(出典:Hotel Center「無料の予約リンク」)連動の考え方はGoogleビジネス×SNSの連動も参照してください。
Googleビジネスプロフィールで気をつけること
- ホテル内のレストランやカフェ、バーは、別のプロフィールを作り、2つ目の事業には別の名称を使うよう案内されています。ホテルのプロフィールにレストランのカテゴリを足さないのが原則です(Googleビジネスプロフィール「ガイドライン」)
- 写真は、大幅な加工や過度なフィルターを避け、雰囲気をありのままに伝える画像を選ぶよう案内されています(Googleビジネスプロフィール「写真と動画」)
宿泊料金の見せ方:景品表示法と総額表示
総額表示:投稿画像やキャプションにも当てはまる
財務省の資料によると、消費税法第63条は、課税事業者が不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う場合に、あらかじめ価格を表示するときは、消費税額と地方消費税額を含めた価格を表示するよう求めています。表示媒体は問われません。税込価格に並べて税抜価格を表示することは認められていますが、税抜価格を「ことさら強調」して消費者に誤認を与える表示は、総額表示義務を満たしているとはいえないとされています。(出典:財務省「総額表示の考え方」)投稿画像の「1泊2食○円〜」も同様に考え、税込で示しましょう。サービス料や入湯税・宿泊税の扱いは、この資料に個別の記載が見当たらないため、国税庁や所管窓口に確認してください。
二重価格と「標準料金」
消費者庁の価格表示の考え方は、役務の価格表示にも基本的に適用されるとしています。過去の販売価格を比較対照にする二重価格表示では、その価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」かどうかが問われ、一般的な目安として、セール開始からさかのぼる8週間のうち、その価格で販売していた期間が過半を占めるかなどが示されています。同じ資料には、リゾートホテルが「標準料金1人当たり40,000円のところ20,000円」と示したが、比較の価格は宿泊客が多い特定の期間に限って適用される価格だった、という不当表示のおそれがある例も載っています。(出典:消費者庁「価格表示の考え方」)「通常料金」「標準料金」の呼び方と比較の根拠は、社内で決めておきましょう。
「残り○室」「限定○室」と追加料金
- 供給量が限定されていることを強調しながら、実際には限定量を超えて取引に応じる場合は、景品表示法違反のおそれがあるとされています。「残り○室」などは実際の空室と合わせて更新しましょう(消費者庁「おとり広告」運用基準)
- 表示価格に加え、通常は請求されない手数料等の支払いが必要なのに明瞭に記載されていない場合は、有利誤認の例です(消費者庁「おとり広告」運用基準)。追加費用は料金の近くに書きましょう
宿泊客の投稿・口コミ・写り込みの扱い
- 無償で宿泊や食事を提供してSNS投稿を依頼する場合、投稿内容が第三者の自主的な意思によるものと認められなければ事業者の表示になります。「広告」「PR」などの文言や「提供を受けて投稿している」旨の文章は、明瞭な表示の例とされています(消費者庁「ステマ告示の運用基準」)。令和5年10月1日からステマは景品表示法違反です(消費者庁「ステマ規制」)
- Googleのポリシーでは、クチコミの投稿や、否定的なクチコミの修正・削除と引き換えに割引や無料サービスなどを提供することは禁止されています(Googleビジネスプロフィール「禁止コンテンツ」)。依頼するときは、インセンティブなしで実体験に基づく投稿をお願いします
- 宿泊客の投稿は、再利用前に投稿者の許可を得ます。文化庁は、ネット上の画像は自由に使えるという認識は誤解だと説明しています(文化庁「著作権、OK?NG?」)。UGCの集め方はUGCを集める施策設計も参考にしてください
- 個人情報保護委員会のガイドラインは、顔画像も個人を識別する情報に含まれるとしています(個人情報保護委員会「通則編ガイドライン」)。大浴場や食事会場の写真は、他の宿泊客の写り込みを投稿前に確認しましょう。Googleのポリシーも、同意なく投稿された顔の写る写真や動画を個人情報の例に挙げています(Googleビジネスプロフィール「禁止コンテンツ」)
ホテル・旅館のSNS集客でよくある失敗
| 失敗例 | 起きること | 対処 |
|---|---|---|
| 別タイプの客室写真で投稿する | 優良誤認のおそれ。到着後の不満につながる | 販売する客室タイプの写真を使い、タイプ名を添える |
| 税抜価格だけを大きく載せる | 総額表示義務を満たしていないと見られるおそれ | 税込価格を明瞭に示し、税抜併記は目立たせすぎない |
| 予約リンクが古いまま | 予約ページに着かず機会を逃す | 月1回クリックして確かめる(運用上の例) |
よくある質問(Q&A)
Q. 小さな旅館でもSNS集客は効果がありますか?
A. 効果は一概に言えませんが、規模にかかわらず取り組めます。まず予約ページへ迷わず進める導線を整え、予約システムの流入元で結果を確認してください。
Q. 「当館通常料金」と比べた割引を載せてもよいですか?
A. 載せること自体が禁じられているわけではありません。比較する価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」かが問われます。目安は消費者庁の考え方に示されていますが、宿泊料金は日ごとに変わるため、迷う場合は所管窓口へ。(出典:消費者庁「価格表示の考え方」)
Q. インフルエンサーに宿泊を提供して投稿してもらうときの注意は?
A. 内容を自社の方針に沿わせて書いてもらうなど、自主的な意思によるものと認められない場合は事業者の表示になります。「PR」や「宿泊の提供を受けて投稿」といった表示を、見やすい位置に入れてもらいます。(出典:消費者庁「ステマ告示の運用基準」)
まとめ
ホテル・旅館のSNS集客は、客室・食事・体験を実際の提供内容どおりに見せ、予約の出口である公式サイトまで迷わず進めることが基本です。Instagramで見つけてもらい、Googleビジネスプロフィールで来訪前の不安を解消し、公式サイトで予約してもらう役割分担を決めましょう。
最初の一歩として、今週中に自社の投稿とプロフィールのリンクを見返し、写真と客室タイプが合っているか、料金が総額か、リンクが予約ページに届くかを確認してみてください。外国人旅行者向けはインバウンド向けSNS運用へ。
参考情報・出典
- 消費者庁「表示規制の概要」
- 消費者庁「価格表示の考え方」
- 消費者庁「おとり広告」運用基準
- 消費者庁「メニュー・料理等の表示の考え方」
- 消費者庁「ステマ規制」
- 消費者庁「ステマ告示の運用基準」
- 財務省「総額表示の考え方」
- Instagramヘルプ「ウェブサイトの追加」
- Instagramヘルプ「アクションボタン」
- Googleビジネスプロフィール「ガイドライン」
- Googleビジネスプロフィール「写真と動画」
- Googleビジネスプロフィール「投稿」
- Googleビジネスプロフィール「禁止コンテンツ」
- Hotel Center「無料の予約リンク」
- Hotel Center「予約リンクで旅行者とつながる」
- 文化庁「著作権、OK?NG?」
- 個人情報保護委員会「通則編ガイドライン」

