皮膚科・美容皮膚科のSNS

皮膚科・美容皮膚科のSNSのアイキャッチ画像

皮膚科・美容皮膚科のSNSは、ニキビやアトピーといった保険診療の悩みと、シミ取りやレーザー、注射などの自由診療が、同じアカウントに並びやすい点に特徴があります。肌の変化は写真で伝わりやすい反面、ビフォーアフター写真や効果の表現は医療広告規制で最も厳しく見られる部分です。

この記事では、厚生労働省の医療広告等ガイドライン、Q&A、事例解説書、令和7年8月の美容医療に関する通知を原文で確認し、保険診療と自由診療の違い、自由診療の投稿の組み立て方、写真と体験談、医師個人のアカウントの注意点を整理します。法令や指針は改正されるため、公開前に最新の資料を確認し、個別の判断は保健所に相談してください。全体の仕組みは医療広告ガイドラインとSNS、院内の運用はクリニックのSNS集患完全ガイドを参照してください。

この記事の3行まとめ

① 保険診療は処置の実施を、自由診療は「自由診療である旨と標準的な費用」を併記して載せる。美容医療の多くは、限定解除の4要件を満たさないと広告できない
② 肌のビフォーアフター写真は、加工・撮影条件の操作が不可、写真だけも不可。体験談は患者・スタッフ・医師本人を問わず不可
③ 医師個人のXも、医療機関への特定性と誘引性があれば医療広告に相当。専門医は認定団体名を併記し、学会の「会員」や手術件数は載せない

保険診療と自由診療で、載せ方が変わる

医療広告は、法律や告示が認めた事項に限られるのが原則です。治療の方法は、次のように整理されます。

区分広告の考え方(指針)皮膚科での例
保険診療診療報酬点数表に規定する手術・処置等を実施している旨は広告可能。疾病が完全に治る旨など、効果を推測的に述べるのは不可保険診療として行う処置の実施の案内
自由診療(保険診療と同じ手技)「自由診療」「保険証は使えません」などの旨と、標準的な費用を併記すれば広告可能指針の具体例に「顔のしみ取り」「イボ、ホクロの除去」がある
自由診療(承認を受けた医薬品・医療機器を承認の範囲で使用)同様に、保険が適用されない旨と標準的な費用を併記すれば可。医薬品の販売名・機器の型番は不可承認された医療機器を使う治療の案内
上記以外の自由診療広告可能事項ではない。限定解除の4要件を満たし、禁止される広告に当たらない場合に限り広告できるHIFU施術、糸リフト、二重埋没術など

(出典:指針、令和7年8月15日通知)令和7年8月15日の通知は、HIFU施術や糸リフト、二重埋没術をはじめとする自由診療の美容医療は広告可能事項になっておらず、問い合わせ先を明示したウェブサイトでも、治療の内容・費用・リスク・副作用などの詳細が提供されていなければ違反になるとしています。(出典:令和7年8月15日通知)診療科名は、指針が例示する名称に「皮膚科」「美容皮膚科」があります。一方、「アンチエイジング」は診療科名として認められません。(出典:指針)

肌悩み・スキンケアの啓発投稿で気をつけること

「ニキビのメカニズム」「日焼け止めの選び方」といった啓発は、皮膚科のSNSの定番です。ただし、医院名が分かるアカウントの投稿は医療広告に当たりえます。指針は、科学的な根拠が乏しいのに特定の症状のリスクを強調して受診を促す表現や、特定の処置の有効性を強調して実施へ誘導する表現を、誇大広告としています。(出典:指針)事例解説書にも、根拠が乏しいのに「美白・美肌にも効果的」と有効性を強調する例があります。(出典:事例解説書)根拠を確認できる情報に絞り、「効く」「治る」と断定しないようにしましょう。

ドクターズコスメなど、化粧品や健康食品を扱う場合は別のルールも重なります。指針は、医薬品医療機器等法が化粧品の効能・効果などの虚偽・誇大な記事を禁じ、健康増進法も食品の健康保持増進効果の著しく事実に相違する表示を禁じていると示し、「医薬品『○○錠』を処方できます」のような商品名の広告は不可としています。(出典:指針)

美容皮膚科の自由診療:投稿を組み立てる手順

  1. 施術が広告可能事項に当たるか確認する(上の表)
  2. 当たらなければ、限定解除の4要件(自ら求めて入手する情報であること、問い合わせ先、内容・費用、リスク・副作用)を満たす
  3. 内容と費用は、治療内容、期間・回数、標準的な費用(最低から最高)を示す
  4. 承認の効能・効果と異なる使い方など、未承認医薬品等に当たる場合は、その旨、入手経路、国内の承認品の有無、海外の安全性情報、救済制度の対象外であることも示す
  5. これらを、プロフィール・投稿・返信の中で一体的に示す

(出典:医療法施行規則、指針、事例解説書)Q&Aは、プラセンタ注射が承認された効能・効果以外の目的で使われる場合は、限定解除を満たさなければ広告できないとしています。(出典:Q&A)

費用と回数には、皮膚科らしい落とし穴があります。事例解説書は、毛周期の関係で受けられる回数が限られるのに「し放題」「回数無制限」と書くと誤認を与えるとし、キャンペーン価格やモニター割引で費用を強調する書き方も例示しています。(出典:事例解説書)リスクの欄には、メリット(「ダウンタイムはありません」)や禁忌、注意事項だけを書いても足りず、治療で起こりうる副作用を書く必要があります。事例解説書の高周波治療の改善例には、施術ごとに内容は異なりますが、疼痛、軽度の発赤、腫脹、痂皮、紫斑、まれに炎症後色素沈着・熱傷・瘢痕形成が挙げられています。(出典:事例解説書)

次は、ルールの当てはめ方を示す架空の投稿例です。
「最新レーザーで頑固なシミもすっきり。ダウンタイムなし。今月は初回50%OFF! #シミ取り」
「最新」は根拠を示せなければ誇大、「すっきり」は効果の表現、「ダウンタイムなし」はリスクの説明ではなく、「50%OFF」は費用の強調、治療内容・標準的な費用・主なリスクも不足しています。(出典:指針、Q&A、事例解説書)

ビフォーアフター写真と体験談

肌の写真は、条件を変えれば簡単に見栄えが変わるため、指針は撮影条件や被写体の状態を変えて撮影した術前術後の写真で効果を強調するのは誇大、効果があるように加工・修正した写真は虚偽としています。術前のみ・術後のみの写真も広告できません。(出典:指針、Q&A)詳細な説明(治療内容、費用、主なリスク・副作用等)を付す場合は、写真の近くに、リンク先ではなく同じ画面で示す必要があります。(出典:指針、事例解説書)運用の例として、症例写真は撮影の角度・照明・メイクの有無をそろえ、加工しないルールを決めておきましょう。

体験談は、患者さんの声だけでなく、スタッフや院長自身の体験、患者の投稿の引用、医師の症例紹介の中に患者の発言を入れる形も対象です。(出典:事例解説書)「実際に使った人の声」を載せたくなる場面ですが、載せないのが原則です。

医師個人のアカウントとプロフィールの書き方

皮膚科医がXで医学情報を発信する場合も、個人アカウントによる情報であっても、医療機関・医師等への特定性と誘引性を有すれば医療広告に相当します。(出典:事例解説書)プロフィールの書き方には、次の決まりがあります。

  • 専門医は「日本専門医機構認定○○専門医」のように認定団体名を示す。「厚生労働省認定」は虚偽、団体名のない「○○専門医」は誇大(皮膚科は日本専門医機構の基本的な診療領域に含まれる)
  • 略歴は客観的な事実で、正否を確認できるものに限る。学会の役員は現任で公開されていれば可、単なる会員は原則不可
  • 研修を受けた旨、医師個人の手術件数は、原則として広告できない

(出典:Q&A)研修を受けた旨や手術件数は、限定解除の要件を満たす場合に限って広告できる場合があります(手術件数は求められれば根拠を示す必要があります)。(出典:Q&A)

肌の写真と個人情報、患者さん側の視点

顔写真は個人情報の例で、病歴などは要配慮個人情報として取得に本人の同意が必要です。撮影前に利用目的を伝えて同意を得る運用にしましょう。(出典:個情委資料)同意があっても広告規制は別に適用されます。患者さん向けには、厚生労働省が、薬の内容、効果だけでなくリスク・副作用、ほかの選択肢、「今すぐ」必要かを確認するチェックリストを公表しています。(出典:厚労省の美容医療チェックリスト)投稿も、決断を急がせず、これらの情報を示す形にそろえると安心です(運用上の考え方)。

よくある失敗

失敗例対処
施術の紹介に写真だけ、または「個人差があります」だけを添える治療内容、費用、主なリスク・副作用を写真の近くに書く
モニター価格や初回割引を大きく掲載費用は分かりやすく示すが、前面に出さない
患者さんのレビューをストーリーズで紹介体験談の違反例。設備や取り組みの紹介に置き換える

よくある質問(Q&A)

Q. 患者さんの肌写真をSNSで使えますか?
A. 個人情報にあたるため、利用目的を伝えて同意を得ることが前提です。そのうえで、ビフォーアフター写真は詳細な説明がなければ広告できません。(出典:個情委資料、指針)

Q. 使っている薬剤や機器の名前を載せてよいですか?
A. 医薬品の販売名は広告できず、医療機器も型式番号や販売名が特定できるものは不可です。ただしQ&Aは、限定解除の要件を満たした場合に販売名の広告を可能としています。(出典:Q&A)

Q. スキンケア系インフルエンサーとのタイアップは可能ですか?
A. 医療広告規制は「何人も」が対象で、アフィリエイターも含まれます。医療機関が広告料などの便宜を図って依頼した投稿は、広告として扱われる場合があります。内容の確認と管理を契約で決めておきましょう。(出典:指針)

まとめ

皮膚科・美容皮膚科のSNSは、肌悩みの解説で信頼を築き、自由診療は内容・費用・リスクを丁寧に示すことが基本です。写真と体験談、医師個人の発信にも医療広告の規制が及びます。まずは今の投稿を、保険診療か自由診療か、写真に説明があるか、プロフィールの資格表記が正しいか、の3点から見直してください。最新の資料は厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」で確認できます。

参考情報・出典