歯科医院のInstagram運用

歯科医院のInstagram運用のアイキャッチ画像

歯科医院のInstagram運用で最初に押さえたいのは、投稿のアイデアよりも医療広告のルールです。院内の雰囲気やスタッフ紹介、予防歯科の啓発は相性のよいテーマですが、医院名が分かるアカウントからの発信は、医療法の広告規制の対象になる場合があります。善意で載せた体験談やビフォーアフター写真が、規制に触れることもあります。

この記事では、厚生労働省の指針・Q&A・事例解説書と医療法の条文を原文で確認し、投稿が広告に当たるかの考え方、避けたい表現、自由診療の条件、口コミと患者さんの写真の扱い、投稿前のチェックリストを整理します。法令や指針は改正されるため、公開前に最新の公式資料を確認し、個別の判断は保健所や専門家に相談してください。

この記事の3行まとめ

① 医院名が分かる公式アカウントの投稿は、受診を誘引する意図があれば医療広告に当たる。プロフィール・投稿・返信・ハッシュタグまで確認する
② 体験談・ビフォーアフター・「日本一」「痛くない」などは要注意。自由診療は内容・費用・リスクを投稿内で一体的に示す
③ 院内・スタッフ・予防の発信は広告可能事項の範囲で組み立て、患者さんの写真は同意を取り、投稿前チェックと院長確認を回す

歯科医院のInstagram投稿は「医療広告」に当たるのか

医療法第6条の5は、歯科医業や診療所に関して、いかなる方法によるかを問わず、医療を受ける者を誘引するための手段としての表示をする場合に、虚偽の広告を禁じています。(出典:医療法)厚生労働省の指針は、次の3つをすべて満たす場合に医療広告に該当するとしています。(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン)

  • 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
  • 歯科医業を提供する者の氏名や診療所の名称が特定できること(特定性)
  • 歯科医業や診療所に関する内容であること

規制の対象は医療機関だけでなく、広告代理店など「何人も」です。(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン)Instagramについて、事例解説書は、プロフィール・投稿(一定期間で限定公開されるものを含む)・返信を医療広告の構成として挙げ、ハッシュタグ部分も対象で、投稿と関係のないハッシュタグによる誘引は不適切としています。1つの投稿は単独で1つの広告として扱われます。(出典:厚労省 事例解説書)院内の掲示物は広告とされませんが、Instagramは院外の人にも見える媒体です。

運用上の考え方(例)として、公式アカウントの投稿は、予防の啓発でもまず広告として扱い、広告可能事項と禁止事項の両面でチェックするのが安全です。個別の判断は保健所に確認してください。

投稿で避けたい表現と、歯科でよくある例

虚偽広告は罰則付きで禁じられています。(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン)指針とQ&Aから、歯科の投稿で起こりやすいものを抜粋します。

類型公式資料の考え方・例投稿での注意(例)
比較優良「日本一」「№1」「最高」などの最上級表現は、事実でも禁止「地域No.1」と書かない
誇大「最先端」「最適」は不可。「最新」は事実で根拠を示せる場合に限り可「最新機器」は根拠を説明できるときだけ
根拠の乏しい表現「痛くない治療」は不可。「歯を削らない治療」は、削らなくても適正な医療を提供できる範囲で可。「99%の満足度」は求められれば根拠の提示が必要「痛くない」「必ず」と断定しない
体験談患者等の主観・伝聞に基づく治療の内容・効果の体験談は禁止。スタッフが書いたものも対象「患者様の声」を載せない
ビフォーアフター誤認させるおそれがある術前・術後の写真等は禁止。術前だけ・術後だけも不可。治療内容・費用・主なリスク等の詳細な説明を付した場合は当たらない写真だけを載せない
費用の強調「今なら○円でキャンペーン実施中」「○○治療し放題プラン」は慎むべきとされる。費用を太字にすること自体は差し支えない割引・特典を前面に出さない

(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン、厚労省 同Q&A、厚労省 事例解説書)

自由診療(ホワイトニング・矯正・インプラント)の投稿条件

広告できるのは、医療法や告示で決められた広告可能事項が原則で、自由診療の多くは含まれません。そこで限定解除の要件を満たす必要があります。要件は医療法施行規則に定められ、次の③④は自由診療の場合に求められます。(出典:医療法施行規則、厚労省 医療広告等ガイドライン)

  1. 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
  2. 問い合わせ先の記載などで、患者等が容易に照会できること
  3. 通常必要とされる治療等の内容、費用等を情報提供すること
  4. 主なリスク、副作用等を情報提供すること

指針は、③では治療内容、標準的な費用、期間、回数を示し、費用が明確でなければ最低から最高までの範囲を示すこと、リンク先のページや極端に小さな文字での掲載は不可としています。(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン)

SNSでは「一連の中で一体的に」示す

事例解説書のSNS編は、治療の内容・費用とリスク・副作用が、プロフィール・投稿・返信の中で「一体的かつ一覧性をもって」示されていなければ違反としています。自院のホームページなど別のリンク先でしか確認できない場合は不十分で、リスクとして「妊娠中の方は不可」のような禁忌や、「当日は飲酒をお控えください」のような注意事項だけを書いても足りないとされています。写真を載せる場合も、写真の付近に同様の情報が必要です。(出典:厚労省 事例解説書)

Q&Aの歯科の例は次のとおりです。ホワイトニングは、承認を得た医薬品を使い、自由診療である旨と標準的な費用を記載すれば広告可能。インプラントは、国内承認の製品を使い、保険適用外の旨と標準的な費用を併記する場合に限り広告可能。「審美治療」は、どの治療か不明で誤認を与える可能性があるため広告できません。(出典:厚労省 同Q&A)矯正など他の自由診療も、条件を満たすか個別に確認してください。

目安(例)として、「内容・回数と期間・費用(最低〜最高)・主なリスク・保険適用外」を同じ投稿に入れられない内容は、効果の訴求ではなく、診療日や予約方法などの案内にとどめるのが現実的です。

発信してよい内容と投稿アイデア

内容公式資料の考え方投稿の例
院内・設備外観・内装の写真や映像、バリアフリー構造は広告可能。医療機器は一般名称で示し、販売名・型番は不可待合室、診療室の写真
スタッフ紹介診療に従事する歯科医師・歯科衛生士等の氏名、年齢、性別、役職、略歴は、写真とともに広告可能。民間資格は不可。非常勤は勤務日時を示す院長・衛生士の紹介
専門性認定団体名を資格名とともに示す。「○○専門医」だけは誇大広告「日本歯科専門医機構認定…」と団体名を併記
診療日・予約診療日・時間、予約の有無、予約の電話番号・URLは広告可能診療カレンダー
健康相談「歯の健康相談」などの実施は広告可能。あいさつ文(「はじめまして」等)も可開院記念のごあいさつ

(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン、厚労省 同Q&A)

予防の啓発では、根拠が乏しいのに症状のリスクを強調して受診を促す表現(「命に関わりますので、今すぐ受診ください」など)が誇大広告の例とされています。(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン)根拠を確認できる情報にとどめましょう。スタッフの趣味など、広告可能事項に当たるか判断しにくい内容は、保健所に確認すると安心です。

予約導線とプロフィールの整え方

Instagramのプロアカウント(ビジネスまたはクリエイター)では、連絡先ボタンに道順・電話番号・メールアドレスを登録でき、インサイトも使えます。(出典:Instagramヘルプ(プロアカウント))プロフィール欄のアクションボタンは、利用できるパートナーが限られ、表示できるのは1つだけです。(出典:Instagramヘルプ(アクションボタン))設定はInstagramヘルプ(設定)を、書き方はプロフィール最適化テンプレートを参考にしてください。

注意点は2つです。1つ目は、プロフィールも広告の一部で、投稿と同じ基準でチェックすること。2つ目は問い合わせ先で、予約専用の電話番号や、折り返しのない窓口は、容易に照会できるとは認められないとQ&Aにあります。(出典:厚労省 同Q&A)実際に答えられる窓口を載せましょう。

口コミ・体験談の扱い

事例解説書には、口コミサイトの口コミの転載・抜粋や、スタッフが書いた体験談、患者の投稿を引用して自院の体験談とする例が、違反として挙がっています。(出典:厚労省 事例解説書)患者さんの投稿のリポストやストーリーズ紹介は避けるのが無難です。

患者さんが自発的に個人のSNSなどに書く感想は、医療機関が広告料等の便宜を図って依頼するなど誘引性がない限り広告に当たりません。ただしQ&Aは、医療機関が患者に(有償・無償を問わず)肯定的な体験談の投稿を依頼すると誘引性が生じるとしています。(出典:厚労省 同Q&A)口コミ投稿のお願いを配る運用は慎重に検討してください。なお、今回確認した指針とQ&Aに「Googleのクチコミ」を名指しした記述は見当たらず、扱いは保健所に確認してください。

患者さんの写真と個人情報

個人情報は、生存する個人に関する情報で特定の個人を識別できるもので、氏名や顔写真も例に挙がります。(出典:個情委 中小企業向け資料)診療や健康診断の情報は要配慮個人情報にあたり、取得や第三者提供には原則として本人の同意が必要です。また、医療の提供など以外の利用は患者にとって必ずしも明らかでなく、利用目的の公表等が必要とされ、例示された通常の利用目的に院外への広報やSNS掲載は含まれていません。(出典:医療・介護ガイダンス)写真や動画を使うときは、利用目的を伝え、書面などで同意を取る運用にしましょう。

子どもが写る小児歯科では、個人情報保護委員会が、同意が必要な年齢は個別に判断すべきとしつつ、一般的には12歳から15歳までの年齢以下の子どもは法定代理人等の同意が必要と考えられるとしています。(出典:個情委Q&A)保護者の同意を得ましょう。ただし、本人の同意があっても広告規制は別に適用されます。個別の判断は専門家に確認してください。

運用体制と投稿前チェックリスト

運用上の例として、担当者が作成と自己確認を行い、院長(広告の責任者)が公開前に最終確認する流れが考えられます。外部委託でも、広告代理店は指導や是正命令の対象になり得ます。(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン、厚労省 同Q&A)

  1. 最上級・断定表現(日本一、最先端、絶対、痛くない等)がないか
  2. 患者さんの感想・口コミ・リポストを使っていないか
  3. 治療写真が術前・術後の片方だけでないか。近くに内容・費用・リスクの説明があるか
  4. 自由診療なら、内容、回数と期間、費用、主なリスク、保険適用外の旨が同じ投稿内にあるか
  5. 割引・プレゼントなど費用や特典を前面に出していないか
  6. スタッフの氏名・略歴・資格は正確で、認定団体名を併記しているか
  7. 機器の販売名・型番、薬の商品名がないか
  8. 写真に写る人の同意(子どもは保護者)があるか
  9. ハッシュタグは投稿内容と関係しているか

投稿後は、インサイトでフォロワーの情報や投稿ごとの反応を確認できます。(出典:Instagramヘルプ(プロアカウント))クリニック全体の戦略はクリニックのSNS集患完全ガイド、集患の考え方はクリニックのInstagram集患術、規制の全体像は医療広告ガイドラインとSNSも参照してください。

よくある失敗

失敗例起きること対処
患者さんの声をストーリーズで紹介体験談として違反になり得る引用せず、設備や取り組みの紹介に置き換える
ホワイトニング写真に「個人差があります」だけ添える内容・費用・リスクの説明不足で誤認を与える内容、回数、費用、主なリスクを同じ投稿に書く
詳細は「プロフィールのリンクへ」で済ませる別リンクでの説明は不十分とされる必要な情報を投稿内に収める
担当者1人で投稿し、確認者がいない資格や数値の誤記に気付けない院長の最終確認を仕組みにする

よくある質問(Q&A)

Q. 患者さんがGoogleやSNSに書いた感想を、院のInstagramで紹介してもよいですか?
A. 避けてください。事例解説書では、患者の投稿を引用して自院の体験談とする場合も違反とされています。(出典:厚労省 事例解説書)

Q. ビフォーアフター写真は一切載せられませんか?
A. 一律禁止ではなく、治療内容、費用等と主なリスク・副作用等の詳細な説明を付した場合は、誤認させるおそれのある写真等に当たらないとされています。ただし治療効果は広告可能事項でなく、限定解除の対象でない場合は広告できないとも書かれています。SNSでは写真の付近に情報が必要です。載せる前に保健所へ確認してください。(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン、厚労省 事例解説書)

Q. 運用を代行会社に任せるときの注意点は?
A. 広告規制は「何人も」対象で、代理店も是正命令などの対象になり得ます。投稿前に院長が確認する流れを、契約と運用で決めておきましょう。(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン、厚労省 同Q&A)

Q. 院長やスタッフの顔出しはできますか?
A. 氏名、年齢、性別、役職、略歴は写真とともに広告可能で、歯科衛生士なども対象です。民間資格は広告できません。スタッフ本人の同意も取りましょう。(出典:厚労省 医療広告等ガイドライン、厚労省 同Q&A)

まとめ

歯科医院のInstagramは、院内の様子やスタッフ、予防の情報を丁寧に届けることで、通院のハードルを下げる場になります。そのためには、公式アカウントの投稿が医療広告に当たりうることを前提に、体験談・ビフォーアフター・最上級表現を避け、自由診療は内容・費用・リスクを投稿内で示すことが欠かせません。まずは次の投稿からチェックリストで確認し、院長が公開前に見る流れをつくってください。最新の指針は厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」で確認し、迷う場合は保健所に相談しましょう。

参考情報・出典