書店のSNS活用

書店のSNS活用のアイキャッチ画像

書店は、本という同じ商品を大型店もネット書店も扱っています。その中で独立系書店や個性のある書店が選ばれる理由は、「この店員さんの選ぶ本なら読んでみたい」という信頼です。SNSは、その選書の視点を、店に来る前の人に届ける場になります。

ただし、書店のSNSには、書影(表紙画像)や本の一節の扱いなど、著作権に関わる場面が毎日のように出てきます。この記事では、新刊紹介・選書・イベント告知の運用と、書影・引用の考え方を、文化庁や出版社の公式ページで確認できた範囲で整理します。本文は2026年10月4日時点の確認内容です。個別の判断は出版社や専門家に確認してください。小売店全般の来店導線は小売店SNS集客完全ガイドも参考になります。

この記事の3行まとめ

① 書店のSNSは「誰が・なぜその本を選んだか」を書くことが差別化になる
② 書影は出版社ごとに方針が違う。使う前に各社の案内を確認し、条件(著者名・書名・出版社名の明記、改変しない)を守る
③ 本の一節の紹介は「引用」の条件を満たすか確認し、出所を明示する

媒体の役割分担と投稿ネタ

次の表は一例です。公式の決まりではなく、運用上の考え方(例)です。

媒体役割(例)投稿ネタ(例)
X入荷・発売日・フェアのお知らせ、訂正今日届いた新刊、品切れ・再入荷、営業時間の変更
Instagram棚や店内の雰囲気、選書の紹介面陳の写真、今週の一冊、フェアの棚
Googleビジネスプロフィール来店前の確認、イベントの告知営業時間、イベント投稿
LINE公式常連さん向けの連絡取り置きの案内、イベントの空き状況

Googleビジネスプロフィールの投稿には「最新情報」「特典」「イベント」があり、イベントはタイトル、開始日と終了日、開始・終了の時刻を設定します。時刻を指定しないと、期間中24時間続くものとして表示されます。(出典:Googleビジネスプロフィール「投稿を作成、管理する」)LINE公式には、営業時間や定休日のお知らせなどのテンプレートがあり、配信を予約することもできます。(出典:LINE公式「メッセージ配信を作成する」)

選書の投稿は、「①本の紹介(書名・著者・出版社)、②選んだ理由を店員の言葉で2〜3文、③どんな人に向くか」の3点をそろえると、読む人が判断しやすくなります(例)。文章の型はSNS投稿文の書き方テンプレートが参考になります。

書影(表紙画像)は出版社の案内を確認する

書影をSNSに載せてよいかは、今回確認した文化庁の「著作権テキスト」には書影を名指しした記載が見当たりませんでした。出版社側の案内は、次のとおり会社ごとに異なります。

出版社公式ページの案内(要旨)
集英社個人に対して、出版物の表紙やカバー、パッケージ写真の利用許諾は行っていないと案内。個別の問い合わせへの回答や判断・審査もしないとしている。法律で認められた場合を除き、表紙などを無断でSNSに載せることは禁じられていると案内(集英社FAQ)
学事出版本の紹介や書評を目的とする場合、書影のそばに著者名・書名・出版社名を明記し、トリミングや改変をしないなどの条件で、事前の許諾申請なしに使える(学事出版)
勁草書房書誌情報(著訳編者名・書名・出版社名)を同じページに明記し、トリミングせずに使う条件で、許諾申請は不要(勁草書房)
青弓社ウェブサイトやSNSなどで使う場合も許諾申請は不要。書影の近くに著者名・書名・出版社名を明記し、トリミングや文字の重ね置きなどの改変はしない(青弓社)

このように、同じ「書影」でも、許諾不要とする出版社と、そうでない出版社があります。表の4社は一例で、すべての出版社の方針ではありません。運用では、次の手順を決めておくと迷いません(例)。

  1. 出版社の公式サイトで、書影の利用案内を探す
  2. 条件があれば、投稿フォーマットに「著者名・書名・出版社名」を入れておく
  3. 画像は加工せず、トリミングもしない(案内がある場合)
  4. 案内が見つからない、または判断がつかない出版社は、問い合わせるか、書名と文章だけで紹介する

本の一節を載せるときは「引用」の条件を確認する

文化庁の「著作権テキスト」によると、報道・批評・研究などの目的で他人の著作物を「引用」して使う場合は、許諾なしでよい例外があります。条件は、すでに公表された著作物であること、「公正な慣行」に合うこと(引用の必然性があること、言語の著作物ではカギ括弧などで引用部分が明確なこと)、目的上「正当な範囲内」であること(本文が主、引用が従の関係にあり、分量が必要最小限であること)、そして出所を明示することです。(出典:文化庁「著作権テキスト(令和8年度版)」)

出所の明示は、複製や利用の態様に応じて合理的な方法で、題号、著作者名、出版者名などを示すものです。また、「出所の明示」をしても、法律上の要件を満たさなければ了解が必要とも説明されています。(出典:文化庁「著作権テキスト(令和8年度版)」)

書店の投稿に当てはめると、「書評として自分の感想が本文で、本の一節はその裏づけとして短く添える」形は、条件に近づきます(例)。一方、感想がほとんどなく、本の文章や帯のコピーを長く並べるだけの投稿は、主従関係が逆になり、引用にあたらないおそれがあります。判断に迷う場合は出版社に確認しましょう。

棚の写真と「写り込み」

同じテキストには、写真撮影のときに本来の対象以外の著作物が写り込む場合の例外(付随対象著作物の利用)があります。条件は、メインの著作物に占める割合などから軽微な構成部分であること、利益を得る目的の有無などに照らして正当な範囲内であること、著作権者の利益を不当に害しないことなどです。(出典:文化庁「著作権テキスト(令和8年度版)」)

店内全景で背表紙が小さく写る写真と、特定の本の表紙を大きく見せる面陳の写真は、条件の当てはまり方が違うと考えられます(例)。個別の写真が例外にあたるかは、ここでは判断できません。表紙が主役の写真は、前の節の書影の案内に沿って扱うと安全です。

出版社からの依頼・献本と広告表示

消費者庁の運用基準では、事業者が第三者のSNS上に自らの商品の表示をさせる場合は、事業者の表示となり得るとされています。一方、商品を無償で提供して投稿を依頼しても、第三者が自主的な意思に基づく内容で表示するなら、事業者の表示にならない例が示されています。また、事業者の表示であることを示す方法として、「広告」「PR」などの文言や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章の例が挙げられています。(出典:消費者庁「ステマ告示の運用基準」)

書店員個人のアカウントでの発信にも注意が必要です。同じ運用基準では、商品の販売を促進する地位や立場にある従業員が、販売促進のために行う表示は、事業者の表示に当たる例とされています。一方、販売を促進する地位や立場にない従業員が、一般消費者でも知り得る情報を使い、販売促進が目的ではない表示をする場合は、当たらない例とされています。(出典:消費者庁「ステマ告示の運用基準」)店の宣伝を兼ねて個人アカウントで投稿するときのルールは、あらかじめ決めておきましょう(例)。

出版社から「この新刊をこの内容で紹介してほしい」と依頼されて投稿する場合は、「PR」などと明示する運用にしておくと安全です(例)。店の自主的な選書とは分けて管理しましょう。

値引き・フェア・取り置きの告知

書籍は、独占禁止法の第23条で、著作物を発行する事業者などが再販売価格を決めて維持する行為が、一定の条件のもとで適用除外とされています。(出典:e-Gov「独占禁止法」)公正取引委員会の平成13年の文書では、対象の著作物の範囲を、書籍・雑誌、新聞、レコード盤、音楽用テープ、音楽用CDの6品目に限るとしています。(出典:公正取引委員会「著作物再販制度の取扱いについて」(平成13年))フェアでの値引きやポイント付与を告知する前に、出版社や取次との取引条件を確認してください(例)。詳細は専門家に確認を。

取り置きや在庫の案内では、売却済みの商品を広告したままにしない、数量を表示するなら実数にする、といった点が、景品表示法の運用基準に示されています。(出典:消費者庁「おとり広告に関する表示等の運用基準」)完売や品切れは、すぐに投稿へ追記しましょう(例)。

よくある失敗

失敗例対処
出版社の案内を見ずに書影を加工して載せる公式の案内を確認し、条件(クレジット・改変禁止)に従う
本の文章を長く引き写す感想を本文にし、引用は必要最小限に。出所を明示
品切れの本の投稿が残る完売・品切れを追記。担当者を決める
依頼された新刊紹介を、店の選書として出すPRなどと明示する

よくある質問(Q&A)

Q. 書影を載せるのに許可は必要ですか?
A. 出版社ごとに案内が異なります。条件つきで許諾不要とする出版社もあれば、個人への利用許諾を行わないとする出版社もあります。各社の公式の案内を確認してください。(出典:勁草書房、集英社FAQ)

Q. 本のあらすじや帯の文言を載せてもよいですか?
A. 引用として許される条件(公正な慣行、正当な範囲、出所の明示)を満たすか次第です。感想が本文で、引用が従になるよう、短く使いましょう。(出典:文化庁「著作権テキスト(令和8年度版)」)

Q. 発売前の新刊情報を先に載せてもよいですか?
A. 今回、公式資料での確認はできませんでした。出版社や取次から出ている解禁日などの案内に従ってください。

まとめ

書店のSNSは、選書の理由を店員の言葉で伝えることが差別化の中心です。そのうえで、書影は出版社ごとの案内を確認し、本の一節は引用の条件を確認し、出版社の依頼による紹介は広告と分かるようにしましょう。

最初の一歩として、よく紹介する出版社の書影の案内を調べ、投稿フォーマットに「著者名・書名・出版社名」を入れる運用から始めてみてください。

参考情報・出典