美容系SNSのUGC設計

美容系SNSのUGC設計のアイキャッチ画像

お客様が自分の言葉と写真で投稿するUGC(ユーザー生成コンテンツ)は、サロン側が書く紹介文とは違う見え方をします。ただ、投稿を「促す」設計をすると、依頼と自主性の境目、お客様の写真の権利、特典の景品規制などが関わってきます。

この記事では、美容サロンがInstagramを中心にUGCを集めて活用するときの設計を、「集める」「特典を付ける」「リポストの許可を取る」「個人情報を守る」の順に整理します。Googleビジネスプロフィールのクチコミと個人情報の基本はエステサロンのSNS集客でも触れています。ルールは公式の原文で確認できた範囲だけを書き、個別の判断は専門家や所管窓口へご確認ください。

この記事の3行まとめ

① 投稿の依頼はしても、内容の指示や、投稿を条件にした見返りで「自主的な意思」を損なうと、事業者の広告として扱われうる
② お客様の投稿は、お客様に権利がある。クレジットを付けても、無断のリポストは侵害になりうる。利用範囲を決めて許可を取る
③ 特典は景品規制を確認し、投稿者の情報を台帳にするなら利用目的を決める

UGCの種類と、サロンの関わり方で変わるルール

消費者庁のステルスマーケティング規制の運用基準は、第三者の表示が「事業者の表示」になるのは、事業者が表示内容の決定に関与し、第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない場合だと整理しています。(出典:消費者庁 ステルスマーケティング告示の運用基準)UGCの種類別に、運用基準の書きぶりを整理すると次のようになります。

UGCの種類運用基準の考え方(要約)サロン側の対応(例)
お客様が自主的に投稿自主的な意思に基づく内容なら事業者の表示にはならない内容は指示せず、投稿をそのまま尊重する
SNSキャンペーンに応募するための投稿第三者が自主的な意思に基づく内容として表示する場合は、事業者の表示にならない例に挙げられている応募条件はタグ付けなどにとどめ、内容は自由にする
無償で施術を提供して投稿を依頼依頼しても自主的な意思による内容なら該当しない一方、事業者の方針や内容に沿った表示で自主性が認められないときは事業者の表示広告の場合は「PR」などを明記してもらう
スタッフ・関係者の投稿販売を促進する立場の従業員が、販売促進のために行う投稿は事業者の表示お客様を装った投稿はしない。「スタッフ」と分かる形にする
自社サイトでの口コミの転載恣意的な抽出や内容の変更をせず、そのまま引用する場合は事業者の表示にならない例良い点・悪い点の片方だけを載せない

広告である場合の表示は、「広告」「PR」「A社から商品の提供を受けて投稿している」などが明瞭な例、大量のハッシュタグの中に埋もれさせるのは不明瞭な例とされています。(出典:消費者庁 ステルスマーケティング告示の運用基準)ステマ規制の全体像は消費者庁「ステルスマーケティングは景品表示法違反となります」をご覧ください。

なお、運用基準は、事業者自身のSNSアカウントを通じた表示を、事業者の表示であることが明らかな例に挙げています。サロンのアカウントでお客様の投稿をリポストすれば、サロン自身の発信になります。効果を断定する内容をそのまま載せると、景品表示法の優良誤認(5条1号)などが問題になりえます。(出典:消費者庁 ステルスマーケティング告示の運用基準、消費者庁「表示規制の概要」)

投稿を集める設計:依頼は「お願い」にとどめる

投稿を促すこと自体は問題ありません。大切なのは、内容に口を出さないことです。たとえば、Googleのビジネスプロフィールのポリシーは、クチコミを依頼するときに特定のコンテンツを含めるよう求めることや、肯定的なクチコミだけを募ることを禁止しています。(出典:Googleビジネスプロフィール ヘルプ「禁止または制限されているコンテンツ」)Instagramの投稿でも、同じ考え方で依頼文を作ると安全です(運用上の例)。

依頼の仕方例
よい例「よければ、感想や写真を #○○サロン を付けて投稿してください。内容は自由です」
避けたい例「『すぐに効果が出た』と書いてください」「★5をつけたら割引します」(内容の指示や、肯定的な内容だけを条件にした特典)
  • ハッシュタグ:Instagramでは、1つの投稿に使えるハッシュタグは最大5個とされています。専用タグ1つと、地域などのタグを少数に絞りましょう。公開アカウントの投稿だけがハッシュタグページに表示されます。(出典:Instagramヘルプ「Instagramでハッシュタグを使用する」)
  • タグ付け:自分がタグ付けされた投稿は、初期設定ではプロフィールに自動表示されます。手動承認に変えると、承認した投稿だけを表示できます。(出典:Instagramヘルプ「自分がタグ付けされたInstagram投稿を手動で承認するよう設定する」)サロンのプロフィールに載せる前に、内容を確認できます。
  • 声かけと導線:施術後に「投稿はお任せです」と伝え、会計時のQRコードなどで専用タグを案内する(運用例)

特典の設計:景品規制とブランドコンテンツ

消費者庁の説明では、景品類とは、顧客を誘引する手段として、事業者が自己の取引に付随して提供する物品・金銭その他の経済上の利益です。商品・サービスの利用者や来店者に「もれなく」提供する金品等は総付景品にあたり、限度額は、取引価額が1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2です。(出典:消費者庁「景品規制の概要」)「投稿してくれた方全員にプレゼント」のような特典は、この対象になりえます。

一方、購入や来店を条件とせず、ウェブサイト等で広く告知し、抽選で金品等を提供する企画は「オープン懸賞」と呼ばれ、景品規制は適用されないと説明されています。(出典:消費者庁「景品規制の概要」)ただし、景品の扱いと、ステマ規制や各SNSのルールは別に確認が必要です。個別の企画は消費者庁などに相談してください。

インフルエンサーに施術を無償で提供して投稿してもらう場合、Instagramでは、金銭や無料ギフトなどの対価を受けたコンテンツはブランドコンテンツツールを使って投稿する必要があり、「美容処置およびダイエット」は制限されているカテゴリーとされています。(出典:Instagramヘルプ「ブランドコンテンツポリシー」)

リポストの許可の取り方

お客様が撮った写真や動画は、創作性があれば著作物にあたり、著作者は複製や公衆送信を専有する権利を持ちます(著作権法2条1項1号、21条、23条)。著作物は著作権者の許諾を得れば利用でき、利用できるのは許諾された方法と条件の範囲内です(同63条)。氏名表示権(19条)や、意に反する改変を受けない権利(20条)もあります。(出典:e-Gov法令検索「著作権法」)

Instagramのヘルプも、他人のコンテンツの投稿は、購入やダウンロードをした場合、クレジットを付けた場合、利益を得る意図がない場合、内容を変更した場合でも、侵害になることがあるとしています。投稿前に著作者から書面での許可を得ることが推奨されています。(出典:Instagramヘルプ「InstagramまたはThreadsに投稿するコンテンツが著作権法に違反していないことを確かめる方法」)

DMなどで許可を取るときは、次の項目を伝え、返信を記録として残します(運用上の例)。

  1. 対象の投稿(URL)と、使いたい場所(ストーリーズ、フィード、ハイライトなど)
  2. 使う期間
  3. トリミングや文字入れなど加工をしてよいか
  4. お客様のアカウント名をクレジットとして載せてよいか
  5. 広告にも使うか(使う場合は、別途許可を得る)
  6. 取り下げたいときの連絡方法

個人情報と公開範囲の管理

個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、「個人に関する情報」には顔画像等が含まれ、公刊物等によって公にされている情報も含まれると説明しています。投稿者の氏名やアカウント、顔写真をリスト化して管理するなら、利用目的をできる限り特定し、本人に通知または公表する必要があります。(出典:個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」)投稿に写り込んだ他のお客様やスタッフにも、写真の掲載の同意が必要になる場合があります。詳しくは美容サロンSNS完全ガイドをご覧ください。

また、Instagramでは、アカウントを公開していると、他の利用者がリミックスなどの機能で写真や動画を再利用できることがあります。再利用はアカウント単位でも、投稿ごとにも、オフにできます。(出典:Instagramヘルプ「Instagramでのメディアの再利用」)サロン自身のスタイル写真の扱いは美容師のInstagram集客術も参考にしてください。

UGC運用の前にチェックすること

  1. 依頼文で、投稿の内容を指示していないか
  2. 投稿の見返りが、景品の限度額や各SNSのルールに合っているか
  3. 広告になる投稿に「PR」などの表示を付けてもらっているか
  4. リポストの前に、範囲と期間を示して許可を得て、記録しているか
  5. 投稿者のリストを作る場合、利用目的を決めて公表しているか

UGC設計でよくある失敗

失敗例起きること対処
無断でリポスト・ハイライトに保存著作権や削除依頼のトラブル許可を得てから投稿し、範囲と期間を記録する
内容を指示して投稿してもらう自主的な意思とは認められず、広告扱いになりうる内容は自由にし、広告なら「PR」を明記してもらう
スタッフがお客様のふりで投稿ステマ規制に抵触するおそれスタッフは立場を明示して投稿する

よくある質問(Q&A)

Q. お客様がなかなか投稿してくれません。どうすればよいですか?
A. 投稿のハードルを下げる工夫が有効です。専用タグを案内し、「内容は自由」と伝えましょう。見返りを付ける場合は、景品規制(総付景品の限度額など)を確認してください。(出典:消費者庁「景品規制の概要」)

Q. クレジットを付ければ、お客様の投稿を無断でリポストしてよいですか?
A. Instagramのヘルプは、クレジットを付けても侵害になることがあるとしています。著作者から書面での許可を得ることが推奨されています。(出典:Instagramヘルプ「InstagramまたはThreadsに投稿するコンテンツが著作権法に違反していないことを確かめる方法」)

Q. 口コミの投稿で割引をしてもよいですか?
A. Googleビジネスプロフィールでは、クチコミの投稿と引き換えに割引などのインセンティブを提供する行為が禁止されています。(出典:Googleビジネスプロフィール ヘルプ「禁止または制限されているコンテンツ」)Instagramの場合は、景品規制とステマ規制の両面から確認してください。

まとめ

UGC設計の土台は、依頼は「お願い」にとどめて内容は任せる、リポストは範囲を決めて許可を取る、特典は景品規制を確認する、投稿者の情報は目的を決めて管理する、という4点です。「集める」より先に「守る」ルールを決めておきましょう。

まずは今週、リポスト許可のDM文面と、投稿をお願いするときの一言を作ってみてください。

参考情報・出典